「あ、そうだ」
急に空くんが声を出して
立ち止まった
「ど、どうしたの…?」
がさごそと、
部活の荷物や教科書がつめこまれた
スポーツバッグをあさる
「あった!」
そう言って、空くんは
何かを引っ張り出した
「これ!」
こちらに、それを差し出した
「て、手紙…?」
「そ。
だって、俺はまだ手紙続けたいから
俺から、伊織に」
何か特別な便箋に書かれているわけでもない
かわいい封筒な訳でもない
いつもの、小さなメモを
折っただけの手紙
でも
やっぱり嬉しくて
ついつい、
この手紙を抱きしめたくなる
「いつもの、場所でいい?
お返事…」
「もちろん、待ってる」
空くんの、即答が嬉しかった
《待ってる》が嬉しかった
ちらりと、手紙を見ると
“彼女の伊織さんへ”
と
ちょっと崩れた字で書いてあって
空くんが愛おしく思えた