静かだった
今まで以上の静けさと
落ちかけた夕日のオレンジで満たされた図書室は
いつも通っているのに、
不思議と、いつもと違うところへ来たような
そんな感覚になる
そんな空間を、ひとり
ゆっくりと進んだ
「…伊織?」
好きな人の名前をつぶやく
かさり、と
紙か何かが掠れたような音
人の気配を感じた
伊織
伊織の存在を感じて、緊張が高まる
この世界に
俺と、伊織
2人しかいないような気分だ
緊張して思わず、制服のポケットに手を突っ込んだ
くしゃりと、
「あの」手紙の存在を感じて
軽く手で握る
いつもの場所
いつもの本棚
そして
「…空、くん」
藤咲 伊織
俺の、大事な人
「…伊織」
緊張しているような
そんな表情で俺を見上げる伊織は
オレンジに染まっていて
綺麗だった