「で、どーしてこーなったかなぁ…」


今日、ここで、一つわかったことがある


わたしは、不器用です



どうやっても前髪の長さが揃わなくて


合わせようとするほど、焦るほど
切る髪が無くなっていく


李亜さんがなんとか整えてくれたけど


「…すーすーする」


「当たり前だよ…眉毛見えてるもん」


こんなにおでこの風通しがいいのは
きっと生まれたて以来かもしれない


「ま、似合ってるからよし!じゃない?」


そう言われて、鏡を見ると
だいぶすっきりしたし、軽い


まるで、羽が生えたみたいに
飛んでいけそう


…このまま空くんのところに飛んでいけたらいいのにな


なんてね


「というか、伊織ちゃん。
なんで髪切ったの?


…まさか、失恋、な訳ないよね?」





「ち、がいますっ!全然!」


今思うと、確かにそう勘違いされてもおかしくない、気もする…!


髪切った、から、何かあった
につなげる人はきっと多いはず


こんなに急に髪切ったら驚かれる?


失恋女…⁈


まだ告白もしてないのに⁈


慌てて全否定


首を横に降りつつ両手も降って、全力否定


「わ、わかったから、落ち着いて伊織ちゃん!


な訳ないよねー、だよね!」


わかってもらえたようで、何よりです


「それで?なんでこんなバッサリ?」


バッサリになってしまったのは
完全に事故なんだけど


「空くんに、告白、するって…
決めたんです!


それで、その…」


昔の弱い自分を捨てたくて


泣いてばかりの自分はおしまいにしたくて


空くんの隣で笑って


空くんの笑顔を、一番近くでみれる女の子になりたくて



変わった自分を、空くんに見て欲しかったから


…なんて言うのは、さすがに恥ずかしいから


「気合、いれる…みたいな…?」


ごまかします、ごめんなさい



「何それ!初めて聞いた!

…でもいいと思う!伊織ちゃんらしくて」