「李亜さ、ん…!」
電話をかけた相手は、李亜さん
「はーい、伊織ちゃん?久しぶりー。
何かあった?」
「今…!どこにっ、いますか…!」
はっ、はっ、と
荒い息のまま、電話しながら走り続ける
「今?…家だけど?
部活も入ってないし?」
「今から、家…に、…来てくれませんかっ…!」
湊も優里も、部活で今は頼れない
といっても、今からわたしがやろうとしていることは
誰に頼ることなく、自分の力でやるつもり
でも、うまくいくかわからないから
少しだけ、李亜さんの力をかります
「へ?家に…って、場所知らないよ?」
「住所、送りますっ…!
わたしじゃ、上手くい、くか
わかんない、からっ…
お願い、します…!」
「ちょっ、何する気な…!」
ここで電話を切った
じぶんでも、訳のわからないことを言ってることも
情報不十分だってことも分かってる
でも、わたしは今それくらい必死なんだ
声の出せない、臆病な自分が
だんだん薄れていっている気がした