昇降口へ移動して靴を履き替える
もうとっくに空は真っ暗で
冬の鋭い風が吹いていた
手袋だけはめて寒さ対策
マフラーは今、貸出中
“先に帰ります、ごめんね
また明日ね 伊織”
こう書いたメモを、女子バスケ部の部室と、剣道部の部室に貼り付けた
したいことがあるから、先に帰るね
ごめん、ふたりとも!
自分に出せる、最高速度で走る
履いてるのはローファーだし、
教科書とか入ったカバンは重い
それに加えてわたしは運動音痴
風もあるせいで全然身体は進まないけれど
止まれなかった
空くんへの想いが
体の中で熱くって熱くってたまらない
早く想いを伝えたいの
ずっと誤魔化して、はぐらかしてきてきたけど
もう自分の体の中では押さえておけないくらいあなたが好きなの
だから、わたしも変わるから
まってて
走りながら、わたしはケータイをカバンから出す
「ぅわ…!」
不器用なのも災いして、ケータイが手から飛び出す
「…っと!」
ギリギリセーフ
ケータイをつかみ直して登録してある連絡先に電話をかけた
今までこんなにバタバタしながら電話なんてかけたことない
というか、今まで家族と湊と優里以外と電話なんかしたことなかったっけ…
何回かのコール音が耳に響いた
そして、繋がった