「伊織」
いやだな、幻聴まで聞こえてしまう
「伊織」
ぽすりと、わたしの頭に何かが触れた
縮こまってうつむいていた顔を上げる
幻聴なんかじゃ、なかった
目の前にいる、大好きな人
わたしは思わずぎゅっと、
抱きついた
好きな人の、心配そうな顔も
自分から溢れる涙も気にせずに
ぎゅっと
わたしを受け止めて戸惑いがあった彼の手は
そっとわたしの頭を撫でた
「見つけてくれて…あり、がとう」
こんな、辞書と図鑑に混ざるように泣いたわたしを
「どこにいたって、見つけるよ」
空くんの優しい声
わたしの求めていたそれは、すっと心の中に溶けていった