あともう少しで教室だ


この視線からも、逃れられる


少し、歩調をはやめた





たどり着いた教室の前


これでひと安心


ドアに手をかけて、開けた



見られた



クラスのみんなの目が


こっちを見てる


わたしを見てる


中学時代の記憶が、フラッシュバック


あの時の、視線の恐怖が蘇る


怖い


こっちを見ないで
わたしを、そんな目で見ないで


教室に入ってからは、全部スローモーションに見えた


最近仲良くしている、女の子たちがこちらに寄ってくる


「ねぇねぇ、あの噂本当なの⁈」


声は、やけにはっきり聞こえた


男子が遠巻きに見ているのが分かる


さらに遠くに、鋭い視線を向ける女の子達も見えた


せっかく、こないだ一歩、進んだばかりなのに


後ろに一歩、もう一歩、わたしは逃げるように後ずさる


結局、弱いまんま


その場にいられなくて、視線が耐えられなくて


わたしは、逃げてしまった


元来た道を、とにかく走った


「伊織、行っちゃった…
でも、否定しないんだね」


なんて、女の子の声が聞こえた


「あんなに詰め寄って聞くからでしょ⁈」


湊の怒った声も聞こえた