噂は、最近たちはじめていたものらしい
わたしと空くんが一緒に帰っているところや、あのデートを目撃した人がいたらしい
それから、校内で仲良くしているのを見た!という情報もあったんだとか
あと、相手が藤咲伊織、という
あまり目立たない女子だったから意外性もあったみたい
そして先日の応援の件もあって、噂は大きくなっていた
…
朝、学校
教室へ向かう長い長い廊下
いつも通り、湊と優里と一緒
いつも通り
いつも通りのはずなのに
視線を感じた
こそこそと、覗き見るような視線
昔、浴びてきた視線
見ている人のほとんどは、「噂の人だ」程度の気持ちで深く考えてないと思う
でも、わたしは視線が怖い
わたしはどう思われてる?
空くんとお似合いね、なんて思われてる?
きっと違う
なんであの子が?
他にも可愛い子がいるのに…
あの子なんかに空くんはもったいない
わたしには、こう言っているようにしか感じない
だって、好意的な視線なんて、ないから
鋭い、痛い視線だって混ざっているのがわかる
空くんを好きな人、きっとたくさんいる
その人たちにとって、この噂は嫌なもの
もう、そろそろ二年生になるのに
クラスの男子に、いまだに話していない子がいるレベルの
そんな地味で目立たないわたしが
他学年の生徒からも注目される空くんと
“付き合っている”なんて噂が立つのは
それはそれは不思議なことで…
空くんの人気を感じながらも
近いのに、遠く感じて
自分がもっと明るく目立つ女の子だったら、噂もここまで大きくならなかったのかな
なんて思ってしまった