どんどん、試合のタイマーが進む


そして、メンバーチェンジ


空くんは、他の選手と交代してベンチに戻ってしまった


「伊織…?どうしたのよ、速水、戻っちゃったし…」


黙ったわたしを見て、優里が心配そうに声をかけた


「人、多いから、声出しにくい?」


そうじゃない


いつもは怖く感じる人ごみでも、今日は違う


声が、届かないのが怖い


どんなに一生懸命出したって、
届かなかったら


想いが、伝わらないのが怖い


手紙なら、簡単なのに


伝えるのが、怖かった


「違うの…。
伝わらなかったらって、思うと怖い。
頑張っても、届かなかったら…」


どうしよう…
バスケの試合は、4クォーター


そして、今1クォーターが終わった


まだ、チャンスはある、きっと


どうしよう、声が出ない


どうしよう


どうしよう