そして、時が過ぎて


大会の日


いつも通り、制服を着こなして
手には、大きな袋を下げて


体育館へ乗り込むことにした


すでに学校には、たくさんの人が集まってきていて溢れかえっていた


体育館も、練習している選手の熱気で溢れかえっている


わたしの高校の体育館に、観覧席なんてたいそうなものはないから


2つあるバスケットコートとコートの間の邪魔にならないところに座った


「よし、速水たちの試合はもうすぐ始まるし、この席、ベストポジション!」


「さすが、優里だね」


たしかに、優里の選んだ場所はベストだった


すごく見やすい場所


速水くんたちの、彼方先輩率いる我が校のバスケットボール部はすでにアップを始めていた


「…伊織!」


そんな中、空くんがこっちに走ってきた


「空くん…⁈いい、の?練習…」
「せっかく来てくれたんだし。
…少しだけ」


空くんは、いつも通り笑っていたけど
少し緊張してるようにも見えた


「緊張、する…?」
「…まぁ、少しは」


やっぱり


だけど、
こんな時、何て言えばいいのかな


いろいろ考え抜いた結果、


「…空くんなら、きっと、大丈夫だよ…!

わたし、
いつも頑張ってるの…知ってる、から」



これだけは、言える
いつでも空くんは、頑張っていたから


「…!
ありがと、頑張れそう」


さっきより柔らかい笑顔を見せた空くん
よかった、伝わった


「あ、これ、差し、入れです…」


頑張って持ってきた袋を差し出す


女の子らしく、何か作るなんてできなくて


大きめのスポーツドリンクを買ってきた
バスケ部が何人いるのかわからないから、何本か


「うわ、すごく助かる!ありがとう
…俺、練習戻るね」


そう言って、わたしに手を振って部員の元に戻っていった


「…ねぇねぇ」


優里が、ニヤニヤしながらわたしの肩を突いた


「なに、あんたたち、すごく仲良いじゃない」
「そう、見えた?」


うんうん、頷く優里は
突いた手を優しく頭の上に乗っけて


「それに、普通に話せてたわよ」


「…そうかな、よかった」


ちゃんと、話せていた


それがやっぱり嬉しかった