『もうすぐ、大会だね


調子はどうかな?


はじめてバスケの試合を見るから、どんな風なのか楽しみです!


前、部活の様子を覗いたとき
空くん、すっごくかっこよかったから


頑張っている姿が大好きです
応援してるね』


…手紙なら、かっこいいも大好きも
いくらだって書けるのに


こんなに簡単にかけるのに、言うのはすっごく難しい


でも、きっと


手紙に書かれた『大好き』よりも
直接伝える『大好き』のほうが


何十倍も、想いが伝わるって


そう思うから、そう信じてるから


本にそれを挟む前に、
少し手紙の文を消した


…手紙は、書いても消せるけど
声は消せない


「…難しいなぁ」


そう、思わずつぶやいた放課後の図書室


冬は日が落ちるのが早いけど、その分夕日が綺麗な気がする


朝、空くんと会えたこと
すごく嬉しかったけど


あのもやもやが消えなくて、落ち着かない


手紙だって、こんなに言葉の内容についてもやもやするのは初めて


「伊織ー!帰ろー!」



そんな思いを断ち切るように
湊の、元気なお迎えのお知らせを聞いて


わたしは手紙を挟んだ本を
そっと閉じた