「じゃあ、そろそろ帰るかな」
プレゼントも渡して、笑顔まで見れたのだから、目標達成だ
「ち、ちょっと、待ってて…!」
急に伊織はそう言って家にひっこんだ
またばたばたと足音が響く
…何か期待して、いいのかな
淡い期待を持ちつつ、伊織を待つ
ばたばた
俺の心臓も暴れてる
そして、伊織が戻ってきた
何か白いものを抱えて
「え、えぃっ…!」
「うわ…?」
何か、首に、あったかいものが
…白いマフラーだ
ふわっと、いい香りがした
伊織が、背伸びしてマフラーを巻いてくれた
人に巻くのが初めてみたいで、とにかくぐるぐる巻いてくれる
「伊織、巻きすぎ…!」
「あっ、…ごめん、ね」
口までマフラーが巻かれようとしたところで、止めた
「空くんと、会えるなんて思って…なくって…プレゼント…」
ゆっくり、とてもゆっくりだけど話してくれる伊織
「いいよ、俺が勝手に来ただけだし」
「えと…それで、空くん、寒かったよね。
…だから、マフラー、わたしのだけど…」
「ありがとう、すっごくあったかいよ」
「…寒いなか、来てくれてありが、とう
わたしも、会いたかった、から」
…抱き締めずになんて、いられなかった
ぎゅっと、優しくだけど
伊織は小さくて、女の子で…
とても、あたたかかった
「…そ、らくん⁈」
「ありがとう、俺も会いたかった」
それだけ言って、離れた
これ以上は、俺も恥ずかしくなってしまう
「また、学校で!」
「…う、ん!またね」
真っ赤になった伊織に、
真っ赤になった俺の顔がばれないように
でも、ゆっくりと帰路についた
「あぁ、熱い…」
真冬なのに
「困っちゃうな…まったく」
真夏のように、熱かった