伊織の家のインターホンを押す
やっぱり、緊張する
「…はい」
機械を通して、伊織の声がした
久しぶりの、伊織の声
「…速水、空です。」
なんて言えばいいのかわからなかった
とりあえず、名乗った
とたんに、家から騒がしい音が聞こえた
ばたばた
そして、そろっと玄関が開いて、伊織が顔を出した
「メリークリスマス、伊織…?」
トナカイだ
伊織がトナカイの着ぐるみを着て、顔を出していた
「えっと…あの、今年は、わたしがトナカイの役で…!!」
すごく恥ずかしそうに、一生懸命説明している伊織を見ると、寒さなんて吹き飛ぶくらいに熱くなってきた
「似合ってるよ、着ぐるみ」
「やっぱり、わたしの家、変わってるよね…」
伊織の家では毎年クリスマスは、サンタ役とトナカイ役がいるとかなんとか
「空くん、メリークリスマス…!
でも、なんで…」
「会いたくなって。
それから、トナカイさんにプレゼント」
あれ、俺なんでこんなことさらっと言ってるんだ
自分にドキドキしながら、プレゼントを渡した
李亜に無理やり買い物付き合わされたときに、買ったやつ
「あ、えと、…ありがとう
開けても、いいか、な?」
「開けていいよ」
綺麗に作ってもらったラッピングを、伊織が開けようとする
「あ、あれ…どこから…?」
…伊織はかなり不器用みたいだ
必死にプレゼントの箱を回している伊織は、なんだか可愛くて
「…貸して!開けるから」
「…おねがい、します」
つい、助けたくなるんだ