「まって!」
ぐいっと手を引っ張られて、
慣れない靴を履いていたわたしは
ぽすり、と
空くんの胸の中に収まった
これは、近すぎる
数秒、見つめ合う
まわりの時間が止まってしまったみたいに、長い長い数秒間
「ご、ごめん伊織!」
沈黙を破ったのは空くん
わたしは放心状態で、頭を振ることしかできない
冬なのに、こんなにも寒いのに
あつくてたまらない
「…また誤解させた、かな。ごめん。
困るっていうのは、その、さ
似合いすぎてて、困るってこと…だから。」
驚いてひっこんでしまった涙がまた溢れそうになる
「すごく、似合ってる。」
その言葉が嬉しくて
どうしよう、ドキドキが止まらない
空くんの胸の中で、頭をぽんぽん優しく撫でられた
「もう、伊織を泣かせないって決めたのになぁ…。ほら、笑って!」
そっと視線を上げると、空くんが笑ってる
大好きな、あったかい笑顔
「まだ、泣いて…ないもん」
わたしは少し強がって、笑ってみせた
笑えてるかな?
「うん、やっぱり伊織は笑顔がいいよ」
ありがとう、嬉しい
胸がつまって、言葉にできない
「よし、行こっか。甘いものは好き?」
そっと、わたしと空くんとの距離が離れる
もうちょっと、こうしてたかったなぁなんて思ったのは秘密
「うん、大好き」
この言葉にいろんな意味が込められてるのも、秘密