「こんにちは、伊織」
大きく深呼吸
…よし、落ち着いた
「…こんにちは!あ、あの…ま、待った…?」
精一杯、笑顔をしてみた
空くんの笑顔は相変わらず素敵で…
うわわ、私服の空くん…
うまく説明できないけれど、すごくかっこいい…
見とれてしまいそう
「全然!さっききたところ。」
なんて笑っていう空くんは、実際すごく寒そう
今日は、冬になりかかってきた気候で少し寒い
寒そうに赤い手の先をこすり合わせる空くんを見ていると、
早くに来てくれていたのかな、なんて思う
少し申し訳なく思うけれど、嬉しかった
…待ちきれなくて、来てくれたのかな
なんてね
「行こっか、電車乗るけどいいよね?」
そして、さらっとわたしに電車のきっぷを渡してくれた
「…うん。あ、ありがと…」
空くんの優しさを感じて、ときめく
いこっか、とこちらに手を出す速水くんの手を
ぎゅっと握りたいのを我慢して、そっと手を重ねた
つめたい、けど、あったかい
「…伊織、その格好さ」
前に進み始めた速水くんは、急にくるりとこちらを向いて、わたしを眺めた
どきり
「あ、えと…や、やっぱり似合わないよね、こんなの…」
じっとみられると、すごく恥ずかしくてどんどん声も小さくなってしまう
俯いてしまう
似合ってないかな、やっぱり
難しそうな顔をしてる空くんをみてるとすごく心配になる
「…困る」
その言葉を聞いて、もうわたしは穴があったら引きこもってしまいたい気分になった
「…ご、ごめんなさい、着替えて、くるから…」
かあっと体が熱くなって、視界が滲んでくるのが分かる
元来た道を引き返そうと、わたしはくるりと一回転
恥ずかしい…!
だけど
空くんは、走り出そうとしたわたしの手を引いた