「もう遅くなってきたし、帰ろっか。
送るよ」


という速水くんの言葉で、ファミレスを出た


もうすぐ9時をまわろうとしていた


少し寒い夜の道を、「寒いから手、貸して」という速水くんと手を繋いで帰った


手に速水くんの温もりを感じてすごくドキドキした


「というかさ、伊織。なんで呼びかた〈速水くん〉に戻ってるの?」


あ、そうだった
前、名前で呼んでって言ってくれたっけ


でも今回のことがあって、わたしなんかが名前で呼んでいいのかなって
そうおもって、自然と〈速水くん〉に戻していた


「…いいの?…わたしなんかが…」


ばそっと言った言葉に速水くんは
「いいに決まってるだろ。
…伊織には名前で呼ばれたいし。
リピートアフターミー!空!」


はい!とジェスチャーまでつけて、カタカナ英語で言われてしまった


「そら…くん」
「よくできました、なんてね。」


やっぱり反射的に〈くん〉をつけてしまったけれど…空くんは笑って許してくれた


それに…暗がりの中でも空くんの笑顔は輝いていて素敵で


《伊織には、名前で呼んでほしい》


こんな風に言われたら、ときめいてしまう


もうすぐ、家についてしまう


もっと手を繋いでいたいな…


わたしには、まだそれを言う勇気はないから


少し、歩く速さを落とした