「じゃあ、俺たち席に戻るわ」
行くぞ、と彼方先輩が李亜さんの手を引いた
「あ、ちょっと待って!」
李亜さんが携帯を取り出してわたしの方を見た
「伊織ちゃん、連絡先!交換しよう!」
と、素敵な笑顔とともに声をかけてくれた
…あのキラキラ笑顔は、やっぱり家族のつながりがあるんだなぁって改めて思う
あまり、友達の連絡先とか交換したことがなかったから、純粋に嬉しかった
「空のことで、いつでも相談していいよ」
とこっそり言われてすごく恥ずかしくて、でもすごく頼もしかった
ばいばーいと、李亜さんたちは手を振りながら席に戻っていった
「2人でごゆっくり〜」なんて言葉も残していってくれたので、ふたりきりになってからドキドキしてお互いなかなか話し始められなかった
いいタイミングで、頼んでいたジュースが運ばれてきてなんとか沈黙が破られた
「伊織、声出せるようになってきたんだね」
そう言われて、ハッと気づいた
今日わたし、たくさん話せてた…!
小さい声だけど、ちゃんと声を出せてた
最近は、クラスの女の子とは少しづつ話せるようになってきていたけれど
初対面の人とか、男の人とからなんだかうまく話せなかったのに
なんで彼方先輩と話せるのかは謎だけれど
特に緊張して、話すことのできなかった速水くんと少しづつ話せるようになってるのは
「速水くんとは、もっとちゃんと話したいから…かな…」
つい、心の声が出てしまった…!
引かれる、かな…?
でも、速水くんは恥ずかしそうに
「それ…すごく嬉しい。」
と言ってくれた
その言葉も嬉しいし、自分がこんなに話せるようになったんだ、という実感もあってなんだか心があったかくなった