背は平均のわたしが、背の高い速水くんの横に立つとこんなに差があるんだ


それに、距離が、すっごく近い


隣に立たないとわからないこと、いっぱいあるんだなぁ


速水くんの表情をうかがうように見上げてみると、速水くんも顔が赤くって
わたしも余計に恥ずかしくなる


「伊織」


速水くんは口を開いた


「伊織のこと、たくさん傷つけてごめん。
俺さ、すごく鈍感みたいで。人に言われなきゃ、気づけないくらいでさ。


知らないところで、伊織を苦しめてた。
本当にごめん」


まっすぐわたしを見て、すごく真剣な表情で謝った


「それに、伊織は自分のことをちゃんと教えてくれたのに、俺は何も言えてなかった。謝ること、いっぱいだ…」


わたしは、やっぱり速水くんをすごく悩ませてしまったみたい
元を言えば、わたしが逃げたり、勝手なことしたからいけないのに


「…わたしも、ごめんなさい。
勝手…ばっかりで…」


小さい声しか出ない
でも、大事なことだから携帯で文を打って見せる、とかしたくなかった


…なんとか速水くんに伝わったみたい
「文通終わりにしますって手紙見たとき、すごいショックだったよ」


うぅ…心が痛い…ごめんなさい



「でも、嬉しかったんだ」


…?どういうこと?嬉しい…?


速水くんは少し、腰を低くして戸惑うわたしに目線を合わせて笑った


「伊織、
待っててくれてありがとう。」


その言葉が、一瞬でわたしの心をいっぱいにする
心がいっぱいになりすぎて、入らなかった分が涙になって、ぽろぽろこぼれた


「もう、泣くなって!」
むにっとわたしのほっぺを速水くんは摘んでくる


わたしは泣いたまま笑顔を作ってお返しの言葉を言った


…しばらく歩いて、速水くんはファミレスの前で急に立ち止まった


「伊織、大事なこと言いたいからさ、ちょっと時間いい?」