♪〜♪〜


軽やかなメロディーとともに、わたしが持っていた空くんの携帯が震えた


ぴたっと空くんの動きが急停止
空くんの言葉も、メロディーのおかげで止まってしまった
さっきまでの、なんだか不思議な雰囲気も崩れる
わたしの手の中で携帯は音楽を流し続けていた


「あああ!もう!誰だよ電話かけてくるやつ!!」
空くんが真っ赤な顔をわたしから離した
こんなに空くんと接近したことはないんじゃないかと思うくらい近かった
…きっとわたしの顔も赤いんだろうな
嬉しくて、恥ずかしい



「ごめん伊織!携帯!」
空くんは、顔はこちらに向けずに手だけわたしに出してきた
顔が赤いのを見せないようにしているようだけど、バレバレだ
空くんも、私と同じ気持ちなのかな
なんて考えてしまう


ずっと携帯が鳴っているから、きっと電話なんだろうな
早く空くんに返さないと


そう思って携帯を渡したとき、わたしは見てしまった
携帯の画面に表示されている、電話の相手の名前を


“李亜”


まただ
またこの名前だ


さあっと体が覚めていくのを感じた
まったく、気分が上がったり下がったり大変だなぁなんて、冷静に見る自分もいた


ちょっとごめんね、と断りを入れて空くんは離れたところで通話を始めた
そして、
「は⁈なんで⁈」
と急に声を大きくしたと思ったら、保健室の扉が勢いよく開いた


「そーら!…と伊織ちゃん?だっけ。
こんにちわっ!」


李亜さんが、可愛い顔をこちらに向けていた