速水くんが倒れてるのを見て、わたしは勝手に体が動いていた


「速水くん!!」


普段出ないような大きな声も出た
それくらいわたしの中で速水くんは大事な存在なんだと思う


体育館の入り口でコソコソ練習を覗き見していたくせに、わたしの体は速水くんへ向かって走り出していた


倒れてる速水くんの元にはやく、はやく


「速水くん!大丈夫…?」


速水くんの側でもう一度声をかけれた


こういうときだけ、わたしの声は素直に出てきてくれる


「いてて…」


そういって、普通に起き上がる速水くん


…?あれ、あまり重症そうでもない?
平気そう


速水くんは、いつの間にかそばにいたわたしを見てすごく驚いた顔をした


「伊織…?なんでこんなところに?
…俺は大丈夫だよ。慣れっこだし!


心配してくれてありがとう」


いつもの笑顔で返してくれた
ありがとうの言葉もすごく嬉しかった


それに、どこも怪我してなくってよかった


すごく安心してなんだか気が抜けて、フラフラしてしまう


そんなわたしを見て、速水くんは心配そうに


でもなんだか嬉しそうに私に声をかける


「伊織、ここ危ないし入口の所の方が安全かも。後で部活終わったら迎えに行くから


だから、今日こそ一緒に帰ろう」


一緒に帰ろう


本当に?夢みたい、どうしよう
すごく嬉しい!!


ずっと、ずっと前から一緒に帰ってみたいな、何て思ってた


今、ここで叶うなんて…!
神様、ありがとう!!


…なんて浮かれ気分でフラフラ歩いていたのが悪かったのかもしれない


「あ、危ないです!避けて!」


この声が私に向けられているものとも知らず


わたしは素直に飛んでいた何かを後頭部で受け止めることになる


すごい衝撃に、わたしの意識も一緒に吹き飛んでしまった