「祐也?どうした?最近元気ないけど」
ハルが心配そうに聞いてくる。

「いやあ、ハルはさあ
実花の声きいたことあんの?
俺、実花のこと知って二ヶ月たつのに
一回も声きいたことないんだよな」

 ………。

ハル?
ハルはあっけにとられたよな顔をして
こっちを見ていた。

「祐也知らないのか?
実花、音も聞こえないし
声もだせねんだよ?
ろう者っていったかな」

だからか…。
ぶつかったときも
呼んだときも
靴箱の時も。
声が出せないからお辞儀して
音が聞こえないから
振り向かなかったんだ…。