〜立夏side〜
授業が終わり、帰ろうとした。
すると、後ろから声をかけられた。振り返るとそこには悠太がいた。
「立夏! 一緒に帰ろ!」
「あ……ごめん、今日用事があるからムリ……」
そういってげた箱に行こうとしたら、悠太に腕を掴まれた。
「……それ、嘘でしょ?」
……え?
「立夏が嘘つく時、少し目がきょろきょろするって雪野さんから聞いた。……何を隠してんの?」
「……ごめん……ごめんね、あとでゆっくり話そう」
「俺は今話がしたい。来て」
私は腕を掴まれたまま、どこかに連れていかれた。
悠太が連れて行ったのは悠太の家だった。
「今日お母さんが出張しているから家には俺達しかいないよ。さ、入って」
私は悠太の家にはいった。
「じゃあここで待ってて、お茶淹れてくる」
そういって悠太は部屋を出ていった。
……話した方がいいのかなぁ……
話したら福井さん達になにか言われるかもしれない……
言うか言わないか考えていると、悠太がお茶を持って入ってきた。
「……で? 何をかくしてんの? 正直にいって。俺は立夏の味方だから」
私はその言葉を信じて正直に話した。
「……あのね……ある女子の3人組に、悠太とあまり話すなって言われて……それで……っ」
悠太は私が言い終わったのを確認して、一言目を発した。
「その3人組って福井さん、本田さん、斎条さんでしょ?」
図星だ……。
「うん……」
「そっか……辛かったよね、話せる人がいなくて……でも大丈夫だよ。俺がいるから。……今度、3人に話聞いてみるよ」
「ありがとう……でも、もし怒るときは優しく怒ってあげて?」
「うん、わかってる。女子には殴ったりしないから。じゃあ、もう話忘れたことない?」
「……うん……! 話聞いてくれてありがとう! じゃあまた明日ね〜!」
そう言って私は悠太の家を出て私の家に帰った。
悠太に話してよかった……
金曜日、久しぶりの部活があった。
福井さん達に何かされそうで怖い……。
そう思いながら第2美術室に入ると、福井さん達がいた。
「……尾崎さん、藤野君に言い付けたわね?」
……っ!怖い……!!
私は後ずさって悠太がいる卓球部の部室に走った。
「待ちなさい! 許さないわよ…!!」
後ろから福井さん達が追いかけてくる。
階段を下っていると、つまずいてしまった。
足が……体が動こうとしても動かない……!!
あともう少しで卓球部の部室にたどり着くのに……っ!
「よくも藤野君に言い付けたわね……!?」
後ろから福井さん達がきた。
振り返ると、本田さんが30センチぐらいの鉄の棒で、私を叩こうとするのが見えた。
悠太 助けて…!!
誰かが走ってくる音が聞こえた。
「やめろ!」
……悠太……?
顔をあげてみると、息を切らして走ってきて汗だくになった悠太がいた。
「ふ、藤野君? どうしたの?」
福井さんが少し笑いながら言った。
「どうしたのじゃないだろ、俺の彼女に手を出すなっ……!」
「なっ……! なによー! 藤野君なんか大嫌い!!」
そういって福井さん達は階段をかけ上がっていった。
「……立夏、大丈夫!?」
悠太の優しい声を聞いて、福井さんの怖さから解放された気がして目頭が熱くなり、悠太に抱きついて泣いた。
「ゆっ……悠太ぁ〜……っ! 怖かったよ〜……!」
私は始めて人の前で泣いたと思った。
悠太は、私が泣き止むまで一緒にいてくれた。
あれ以来、福井さん達が私達に近づいてくる事がなくなり、平和な日々が続いていた。
日曜の朝、ベッドで寝転んでいると、私の携帯が鳴った。
相手は悠太だった。
『もしもし、立夏?』
「うん、そうだよ! どうしたの?」
『あれ以来、福井さん達から何かされたりしなかった?』
「うん! でも、同じ部活だから気まずくなっちゃって……」
『そうなんだ……。あっ、じゃあ卓球部入らない?』
「……うん! 入ってみる! 顧問の先生に退部するっていっておくね!」
『あぁ、わかった! 俺も顧問の先生に新しく入って来る人がいること伝えとくよ! じゃあ、また明日な!』
「うん! また明日ね!」
卓球部か〜……
何か起きそうな予感がする……!
翌朝。私は退部する事を伝えるために早く家を出て職員室に行った。
先生は退部して卓球部に入る事を認めてくれた。
そして、入部届の紙をもらった。
「あ! 立夏ー! どうだった?」
教室に入ると、悠太がいた。
「悠太おはよう! オッケーだったよ! 入部届ももらってきたし。あとはお母さんの承認だね」
最近、いい事ばかり続いている。
その幸せがある分、悪いことが起こるんじゃないかと心配になる……
ま、なんとかなるはず!
私は家に真っ先に帰って、お母さんの承認をもらいにリビングにいった。
「立夏おかえりなさい、どうしたの?」
「あのね、今入ってる美術部を退部して卓球部に入ることにしたんだ。だから、ここに印押して!」
その時コーヒーカップを持って飲んでいたお母さんの手が止まった。
え、私なにか悪いこといった……!?
「……立夏、あなた運動神経悪いんじゃなかった……?」
あ……
そうだった。
「でも卓球だもん、大丈夫だと思うし! 何かあったら悠太が……藤野君が助けてくれるし! 私を信じて!」
お母さんは少し考えてから口を開いた。
「……わかったわ、あなたがそこまでいうなら。でも無理はしないでね」
「うんっ……!」
そして今日、初めて卓球をする日がきた。
部室の3年の教室に入ると、顧問の秋野 聡子(あきの さとこ)先生と、部員がいた。
「卓球部にようこそ尾崎さん!」
秋野先生は笑顔で中に入らせてくれた。
「じゃあまず部員紹介から。3年部長の春田君、3年副部長の八木君、1年部員の藤野君、西井君、影水君、堀江君、深川君です」
部員は、ほとんど背が高くて男らしい顔の人だった。
っていうか、女子って私だけ!?
着替えは!?どこでするの!?
「あの〜。着替えはどこですればいいんですか……?」
「男子と同じよ、使う部屋が限られてるので」
……っええええええ!?
同じですかー!?