「立夏ー! 一緒に帰ろっ!」
掃除のあと、滝川が話しかけてきた。
「え、うん……」
滝川と教室を出ようとした時、後ろから腕をつかまれた。
「俺、この子と一緒に帰る約束してたから」
振り返ると、悠太がいた。
「えっ、ちょ、悠太!?」
悠太は私の腕をつかんだまま、私を1年A組の隣の多目的室に連れていった。
「……あいつだれ?」
「あいつって……滝川のこと?」
「滝川……? だれ?」
あ。そうだ、あの時悠太は休んでたんだっけ……
「転校生だよ! 私の幼馴染み。赤田中学校から来たんだよ」
「……へぇー……」
悠太は不機嫌そうな顔で言った。
「……?」
家にかえって、舞に電話をした。
「……もしもし?」
かけてから10秒後に舞がでた。
「あ、尾崎です!」
「立夏? どうしたの??」
「ちょっと気になることがあるんだけど……」
「藤野君とのことでしょ?」
さすが私の親友、私の悩みはお見通しらしい……
「うん、なんか悠太と滝川が仲悪いんだよね……何でだろう……」
「……焼きもちじゃない?」
……『焼きもち』か……
あの悠太が……私に……
そう思うと、なぜか少し嬉しく感じた。
朝、いつも通り学校で本を読んでいると、登校してきた舞がきた。
「みんな! たっ、大変! 藤野君と滝川君が……っ!!!」
え……!?
東校舎の廊下には、30人ぐらいの人だかりができていた。
その人だかりの先には悠太と滝川が殴り合いをしていた。
「悠太と滝川!? なんで……」
――焼きもち……
「――! なにやってるんだ! やめなさい!」
遠くから担任の福岡先生が走ってきた。
先生はなんとか殴り合いをとめて、悠太と滝川は生徒指導室に連れていかれ、話をしている。
あの2人、どうなったのかな……
気になりすぎて、授業にも集中できない。
早く授業終わらないかな……
そう思ったとき、丁度授業が終わりのチャイムがなった。
私は生徒指導室に走っていった。
中からは先生、悠太、滝川が話している声が聞こえた。
「……で、なんで藤野は滝川を殴っていたんだ?」
「…………ムカついたから…………」
「滝川は?」
「…………ムカついたから…………」
「おいおい、二人とも同じかよ……はぁ……」
これは……私が入ってもいい……のかな……
私は生徒指導室のドアを開けた。
「失礼します。悠太、滝川、大丈夫?」
「「えっ、立夏? なんで?」」
二人は見事にハモった。
「先生、もう二人を返してあげてもいいと思いますよ?」
「うーん、そうだな。2人とも、もう殴りあいなんてするなよ」
私と悠太と滝川は生徒指導室を出て屋上にいった。
「……私からも話、聞きたいんだけど……いいよね?」
「……ああ、いいよ」
悠太と滝川は正直に全部話してくれた。
私と滝川が仲良くしているのを見て、悠太が嫉妬して、そして滝川も、私と悠太が仲良くしているのを見て、滝川が嫉妬して
そして朝、滝川と悠太が殴り合いをしていたらしい。
だからさっき先生に聞かれた時、2人とも『ムカついたから……』って言ったんだ……
「「立夏、ごめん」」
2人は同時にいった。
「……えっ? なんで?」
「だって……立夏巻き込んじゃったし……俺の事、嫌いになったでしょ……?」
滝川は泣きそうな顔でいった。
「えっ、そんなわけないよ……! 全然大丈夫だよ!」
「俺も……立夏巻き込んじゃったし……彼氏失格だよな……」
悠太も泣きそうな顔でいった。
「……もっ、もう……2人ともどうしたの……!?」
気がつくと、さっきまで2時間目だったのに4時間目の終わる5分前になっていた。