そんな……健吾達が……裏切った……?
「あんたの味方なんて誰もいないんだよ!!」
「……いッ……いやッ……っいやあぁぁぁあっ!!!」
私は頭を抱えて、皆から生卵をぶつけられて
この時間が終わるのを待ち続けた。
教室は生卵でベトベトになっていた。
「あー楽しかった☆ じゃ、また“明日も”よろしくねーっ♪ あっ、そこ片付けといてよ……ね!!」
ある女子がそういって私の顔に毎日教室掃除に使っている汚いモップを押しつけた。
「……うっ……」
「アッハハハハ!! いい気味! じゃ、任せたよー」
そういって皆は教室を出ていった。
翌日。起きたとき体が重く、学校に行きたくないと思った。でも親だけには知られたくない。私は制服に着替えて学校にいった。
「……あれ? 上履きがない」
……またか。
私は女子トイレにむかった。やっぱりここにあった。私の上履きは、洋式トイレの中に入っていた。すると、トイレに誰かが入ってきた。私はそのままトイレの中に鍵をかけて入った。
「でさー、立夏のこと……どう思う? 瑞菜は男好きっていっていたけど……」
「うん……昨日のはちょっとヤバすぎるよね。……それに、立夏が男好きなわけないし」
「よく先生に言わないでいられるよね、立夏ちゃんは……。私ならもうとっくに不登校だよ……」
「パソコンで調べたんだけど、見て見ぬふりをすることも立派ないじめで、いじめられてる子にとって1番悲しいことなんだって」
「……ねぇ、瑞菜に立夏へのいじめを止めるように訴えようよ!」
――!!舞……有理……花恵ちゃん……!!
「うん、そうだね!」
そして3人はトイレから出ていった。私は3分後に教室に戻った。すると、クラスメートはなにも嫌がらせをしてこなかった。
……有理達……本当に訴えたんだ……
私は自分の席についた。すると、健吾、有理、花恵ちゃんが私の前にたった。
「……立夏、ごめん。守れなくて……助けられなくてごめん。俺、立夏の彼氏なのに……俺達……福井が怖くて逆らえなくて……本当にごめん」
健吾達は私に頭を下げてきた。何回も……何回も謝ってきた。その次の休み時間には、福井さんがきた。彼女は不機嫌そうな顔をしていたが、私に頭を下げて謝ってきた。私は許してあげた。
――でも、私の心の傷は治らない。彼氏にも……友達にも裏切られたこの痛みは、誰にもわからない。実感しないとわからないもの。
本当に福井さんを許してよかったのかな……
私はこの事がずっと頭の中に残り、モヤモヤしていた。今日は一人で食堂にいった。
「……あれ? 尾崎?」
後ろから声をかけられて、振り返ると大河くんがいた。
「どうした、滝川達と一緒に食べねぇの?」
「うん、なんか一人で食べていたい気分だったから……」
「そっか……あ、隣座っていいか?」
「うん、いいよ!」
大河くんは弁当を持って私の隣に座った。
「サンキュ。ところでいじめの件……解決したか?」
「うん、解決したよ。健吾達謝ってくれたし。福井さんも」
「へぇー、福井そんな簡単に謝ってきたんだ? なんか意外」
「? ……なんで?」
「……実はあいつ、福井財閥の娘なんだよ」
!?!?
「そうなの!?」
「あぁ、結構有名だよ。ちなみに俺は神城財閥の息子」
「……ほぇ!?!?」
「んじゃ、またなにかあったらいつでも連絡しろよ?」
「……うんっ!」
大河くんは私の髪をくしゃくしゃとして、食堂をでていった。
大河くんに触られたところが熱い……。なんだろう、この気持ち……
なんか、いつもより脈が速い。
私には……健吾っていう大切な彼氏がいるのに――。
家に帰ると玄関に男物の靴があった。
……お父さん、帰ってきてる……
私は音をたてないように自分の部屋にいった。お父さんは家に帰るとお母さんと喧嘩。たまに私にも当たってくる。
殴られたり蹴られたり、死ねといわれたりもので叩かれたりして痣だらけになった顔を隠すために化粧をして、皆にバレないようにしていた時もあった。……でも今、お父さんはお母さんにしか暴力をふるっていない。
自分が助かってもお母さんが殴られる……。
「はぁ……」
私はベッドに入ってケータイをいじっていた。
〜♪〜♪
そろそろ寝ようと思い、ケータイを置くとメールがきた。画面を見てみると、大河くんからだった。
『神城大河だけど、メール届いてる?』
絵文字もなにもないシンプルなメール。だけどなぜか嬉しく感じた。
『届いてるよ(o^-')b !どうしたの?』
2分後、大河くんから返信がきた。
『特に理由なんてないけど? 元気なのか確認しただけ』
……ないんかい!!
『改めて自己紹介するね!私は尾崎立夏、好きな食べ物はいちご!よろしくね(*^^*ゞ』
『神城大河。好きな食べ物はフォアグラ。よろしくな。あと、もう眠いから寝るね、おやすみ(-_-)zzz』
『うん、また明日ね!おやすみ☆』
私は送信完了したことを確認して寝た。
日曜日。私はまた大河くんとメールしていた。
『あのさ……今度の水曜日、空いてる?』
『ないけど……どうしたの?』
『もしよかったら俺の家こない?』
『うん、いく!』
……ということで、私は大河くんの家にいくことになった。
――水曜日。私が鞄に教科書を入れてると、健吾が話しかけてきた。
「立夏、放課後予定ある? 久々にデートしない?」
「あ〜……ごめん、今日はムリ……またね!」
「そっか……またな!」
私は教室を出て、大河くんが待っている裏門にいった。
「尾崎さん、やっときたね。じゃ、これに乗って」
……す、すごい車……
私はその高級そうな車に乗って、大河くんの家にむかった。
「……あっ、尾崎さん着いたよ」
「……って、なにこの家!?」
大河くんの家は、お城みたいに大きかった。
「ほら、入るよ」
私は大河くんに引っ張られながら、家といえないくらい大きな家に入った。中に入ると、とんでもないものが待っていた。
「「「「「お帰りなさいませ、大河様」」」」」
なんじゃこりゃ……。
そこには、赤い絨毯が敷いてあり、さらにメイドと執事が100人くらいいた。
本当に……夢でも見てるんじゃないかって思う。
「おかえりなさい、大河。……そちらのお嬢さんは?」
奥の扉から大河くんのお母さんが出てきた。
「同じ高校の尾崎さん。これから俺の部屋に連れていきます」
「そうですか。では、あとで執事に紅茶を持っていかせます。大河、尾崎さんにいやらしいことしないのよ」
「……わかってますよ、お母様。からかわないでください」
大河くんのお母さんはクスクスと笑いながら去っていった。私達は長ーい廊下を通って大河くんの部屋に入った。そこは、リビングと同じくらいに広かった。何分かしたあと、執事が入ってきた。
「どうぞ、ごゆっくり」
執事は紅茶を丁寧に置いて部屋をでていった。
「……そういえば大河くんって彼女いるの?」
「いや、いないけど。……気になる人なら……いる」
「へぇ〜……、誰が気になるの?」
「……教えない」
大河くんはそういってプイッと顔を背けた。……なんかかわいい。
「えぇーっ、教え――」
「教えない」
ううっ、即答……
「……タコ女。また赤くなってるし」
「だーかーらー……、タコ女じゃないってばー!!」
私は大河くんの胸をポカポカ叩いた。大河くんはそれを見て笑っていた。
大河くんとこうして一緒にいるのが、幸せに感じた。
帰りは家まで車で大河くんが送ってくれた。
「……今度は……さ、尾崎さんの家にいってもいい?」
「……うん、いいよ!」
「サンキュ!」
夜の街灯が大河くんの顔を照らし、いっそう笑顔がかっこよく見えた。
「……じゃあまた明日――」
大河くんは途中で喋るのを止めた。
「……? 大河くん? どうしたの?」
私は大河くんの見ている方をむいた。そこには――……
「……立夏? なんで……神城と……」
そこには買い物袋を片手に持った健吾がいた。
「……あ……健吾、違うの、これは……」
「何が違うの? ……まさか俺とのデートを断って神城と遊んでたの?」
「っ……」
私は言い返せなかった。
本当のことだから……。
「……滝川、お前本当に彼氏なの? なんで尾崎さんがいじめられてるのに助けてあげなかったんだよ。なんで彼氏なのに助けられないんだよ」
「……それは」
「もういい。お前は彼氏失格だ。彼女を守ることができない彼氏なんて、必要がない」
私は2人の会話を聞いているだけで、喋れなかった。
「……わかった。……立夏、別れよう」
「――!! 待って、……健吾!!」
健吾は走って帰ってしまった。
どうしよう……健吾が誤解しちゃった……!!
私は先に約束していた方を選んだだけなのに……
私は目頭が熱くなり、涙が私の頬を伝った。
「……尾崎さん。俺なら君を絶対守れる。……だから……俺と付き合わない?」
「……えっ、でも気になる人いるんじゃ……」
「それ、尾崎さんだから」
大河くんの顔はよく見ると赤かった。
「……うん……私……付き合う……」
「ありがと……じゃあまたな、おやすみ」
「うん、おやすみ」
私は大河くんを見送り、家に入った。
……これで……よかったのかな……
〜健吾side〜
俺は親父に買い物を頼まれ、コンビニへいった。帰りに立夏の家がある道を通った。すると、立夏が家の前で誰かと話していた。よく見てみると相手は神城大河だった。神城は俺がいることに気づき、冷たい視線で見てきた。そのあと、立夏もこっちをむいた。
「……立夏? ……なんで……神城と……」
「……あ……健吾、違うの、これは……」
「何が違うの? ……まさか俺とのデートを断って神城と遊んでたの?」
俺は立夏が神城といたことにイラッときて、こういってしまった。立夏は返事をしなかった。すると、立夏の隣にいた神城が口を開いた。
「……滝川、お前本当に彼氏なの? なんで尾崎さんがいじめられてるのに助けてあげなかったんだよ。なんで彼氏なのに助けられないんだよ」
それはクラスの女子からの威圧が強すぎて敵わなかったから。と言おうとしたが止められた。
「もういい。お前は彼氏失格だ。彼女を守ることができない彼氏なんて必要がない」
……!確かに俺は……立夏を助けられなかった。……守れなかった……。
「……わかった。……立夏、別れよう」
俺は立夏の顔を見なかった。立夏が泣いてると思ったから。
……泣いてる立夏を見たくなかったから……
「――!! 待って、……健吾!!」
後ろから立夏が呼んでる。だけど俺はそれを無視して走り続けた。曲がり角を曲がったあと、涙が出てきた。
俺はいつも立夏を信じていた。でも今回は信じてあげられないかもしれない。立夏は今まで、一度も嘘や隠し事はしなかったから、とてもショックを受けた。
「なんで……あんなこといっちゃったんだろ、俺……」
俺は家の近くにある小さな公園のブランコに座って呟いた。
「――滝川何してるの? こんなところで」
振り返ると、そこには俺にとって永遠のライバル、藤野と元カノの舞が腕を組んで俺を見ていた。
「……うぅっ……藤……野っ、……舞……! ……ふぇ〜〜ん!!」
俺は藤野に抱きついた。
「おっ、おい! なんだよいきなり!! てか、なんで泣いてんの!? おい、男だろ!? そんなに泣くなよ、服がビショビショになるだろ!!」
藤野はそういっているけど、俺の頭を撫でて、背中をさすってくれた。……こいつ、意外と……優しいんだな……。
俺は2人にさっきあったことを話した。
「へぇ〜、そんなことがあったの……普通、彼氏の方を優先させるよね?」
「あぁ。でも立夏は先に約束していたから神城と遊んだのかもな」
「……だとしたら、俺……誤解してた?」
「「そうだね」」
「どうしよう……立夏、怒ってるかな……?」
「大丈夫だよ! 立夏はそんな理由もなく怒らないよ! 明日3人で立夏を説得しようよ!」
「……あっ……ありがと……」
「あっ、もうこんな時間!! 健吾も早く家に帰りなよ?」
藤野と舞はそういって帰っていった。