「遠慮はいらないゼ、立夏。さあ、俺の胸に飛び込め!」
そういって俺は立夏の腕を引っ張って椅子に座らせた。
――あ、今立夏が座ったときに胸がプルンって……
って、何考えてんだよ俺!
俺は恥ずかしさでいっぱいになりながらボディーソープを泡立てた。
「立夏、暴れないで」
俺は立夏にキスをした。やば……頭がくらっときた。
俺は立夏の胸に触れた。……立夏、いやらしい声だしてんじゃねぇよ……つーかもう俺……我慢できねぇ……
俺は泡だらけになっている立夏を抱きしめた。
――立夏、抱き心地いいな……
そう思った瞬間、意識が抜けていく感じがした。
――――……
目が覚めた時、俺はリビングにいた。そして俺の横には心配そうな顔をして俺を見ている、バスタオルを体に巻いた立夏がいた。
「……健吾っ!! よかったぁ〜……!!」
「俺……どうしてここに……?」
「お風呂で健吾がのぼせちゃったからここまで運んだ」
「……そっか……俺もう寝るね、おやすみ」
そういって俺は立夏にディープキスをして俺の部屋に戻った。
……なんか……やけに体が熱いし頭がクラクラするな……。熱……ではないよな?まあ、もし熱が出たら――……
立夏に看病してもらおう。
俺はベッドに入って寝た。
翌朝。
朝から大変なことになっていた……。
なんで……
なんで立夏が俺のべっ……ベッドにいるのぉぉお!?
つーか男子のベッドに普通に入って……しかも一緒に寝るとか……
立夏……誘ってんのか?立夏め……寝顔までかわいいし……白雪姫みたいだ。色白でまつげが長くて……。もし立夏が赤ずきんだったらオオカミの俺は…………
「食べちまうぞ……?」
ついそういってしまった瞬間、立夏がもぞもぞと動いて寝相を変えた。
……マジで立夏、襲いたくなるんだけど。かわいすぎるんだけど。
俺は我慢できなくなって立夏に優しくキスを落とした。すると、立夏は『ん……』と声を出して起きた。
「ふっ、あぁぁ〜……って、ほぇぇえっ!? なんで健吾が布団にいるの!?」
……は?
「え、知らないけど……。立夏まさか、洋酒飲んだ……?」
立夏からは微かにお酒の匂いがする。よく俺の親父が洋酒とかワインとか置きっぱなしにするからなー。特にリビングテーブルの下に。母さんにバレないように飲んでるらしいけど。
「うーん……あっ、リビングテーブルの下に置いてあったのは飲んだよ。水だよね? アレ」
「…………いや、酒だよ。ペットボトルに入れて母さんにバレないようにしてるから」
「……」
「……」
「……なんかごめんね、健吾……」
「いや、大丈夫……原因はすべて親父だから……」
「じゃあ私、着替えてリビングにいくね」
そういって立夏は俺の部屋から出ていった。
〜立夏side〜
私はパジャマから私服に着替えてリビングにいった。
……ていうか私、どれだけお酒飲んでんの?お花見のときはチョコの洋酒で酔って、今回は水と勘違いして飲んで……。
すると、私服に着替えた健吾が部屋から出てきた。
「……おはよ」
「うん、おはよ」
そして健吾はキッチンにいき、朝食を作り始めた。
「健吾〜、今日の朝食なにー?」
「今日はご飯と味噌汁と目玉焼き」
「やったー! 目玉焼きだー♪」
私は大好物が朝食に食べられるのが嬉しくて、健吾の周りを跳び跳ねた。
「あ、テーブルの上を食べられるように準備しておいてくれない?」
「了解☆」
私は食器棚からお皿や箸を出して並べ、健吾の手伝いをした。
「いっただきまーすっ!!」
私はご飯を口に詰め込んでいく健吾を見つめていた。
わー、すごい食欲……リスみたいに頬が膨れ上がってるし、ご飯粒が口の周りについてるし……
「そういえばさ、舞と付き合ってたときどんなことしたの?」
「え? うーん……ハグしかしてないよ。キスは付き合う前しかしてないし」
「えっ、付き合ってから1回もキスしてないの!?!?」
「まぁお互いに……恥ずかしかったんだろうな。舞……俺がまだ立夏のことが好きってことわかってたらしいし……。あっ、今日どっかいく? 2人でデートに」
「うん、いく!」
「じゃあ9時45分に玄関でよう」
「うん! じゃあまたあとでね♪」
私は部屋に戻ってバッグの中身を準備して、さっきよりオシャレな服に着替えた。
〜♪〜♪
45分になるまで待っていると、健吾からメールがきた。
『よっ。もう準備できた? 水族館いくよ』と書いてあった。私は急いでリビングにいった。
「け〜ん〜ごぉ〜〜っ!!」
私はリビングで待ってる健吾に勢いよく抱きついた。
「ぅおっ!! 立夏どうしたの!?」
「だって〜っ! 水族館好きなんだもーんっ♪」
特にクマノミがっ!!
「よし、立夏いくよー」
「うんっ♪」
私達は家を出て、駅まで歩いて電車に乗った。次に止まった駅ではたくさん人が入ってきて身動きができない状態になってしまった。
「立夏……、大丈夫……?」
「う……ん……」
私達はバラバラにならないように手を繋いで乗り過ごした。
「――次はー猫乃駅ー、猫乃駅ー」
「立夏、次降りるよ」
私達は電車の扉が開いたのと同時に出た。というか、押されて出た。
駅から出て10分後、猫乃水族館に着いた。
「立夏……すごい、満面の笑みだな……。そんなに好きなんだ?」
「うんっ、トビウオみたいに飛び跳ねたいくらいっ!!」
「すごい例えだな……。じゃ、入ろっか」
「うん!」
私達は100円ずつ払って中に入った。
「わあぁぁ……っ! マンボウだっ! あっ、クマノミだ!! キャーッ、タツノオトシゴもいるーっ!」
私は幼稚園児のようにキャーキャーとはしゃいだ。毎回水族館にいくと、いっつもこんな感じだ。
「立夏っ、あまり騒ぐなよ? 周りの人達みんな見てるよ?」
「……あっ、ごめん……」
私は笑いながらそういった。
「あっ、そうそう、12時からイルカショーあるけど、い――」
「いく! 絶対いく!!」
「ぅおっ……立夏の目がキラキラ光ってるように見えるっ……」
「健吾っ、早く広場にいこっ!」
私は健吾の手を引っ張って、イルカショーが始まる広場にいった。広場に着いたが、まだ誰もいなかった。
「やったー! 1番だー♪」
「そりゃそうだろ立夏……まだ11時だよ?」
「んー……じゃあゲームしよ! しりとり!!」
「あぁ、じゃあ……イルカ」
「カ……カルメ焼き!」
「きゅうり」
「リス!」
「スイカ」
「んー……カステラ!」
しりとりを始めてから1時間後。
「…………まぐろ!」
「ろ……露天風呂」
「ロシア!」
「ア……あんぱん! ……あっ」
「健吾の負けーっ!」
「なんか悔しい……あっ、ショー始まるよ」
「わーい♪ イルカッ、イルカッ♪」
広場の入り口から女性の飼育員が出てきた。
「みなさーん! こんにちはーっ! 今日はきてくれてありがとー! 早速、イルカさん達を呼んでみましょう! せーのっ」
「「イルカさーーんっ!!」」
私は大声で叫んだ。
そんなこんなでショーが終わった。
「健吾、楽しかったね! イルカちゃん可愛かった〜♪」
「あぁ、そうだな! ……じゃあもうそろそろ帰るか……」
「うん……」
私達は水族館を出て兎乃駅で降りた。
「……あ、雨だ……私、傘持ってないや……」
「俺もだ……どうしよ……」
「じゃあ走るしかないよね……」
私が走ろうとすると、健吾引きとめて着ていた服を軽く私の頭の上に被せてきた。
「……こうすれば濡れないで済むよ」
「え……でもそしたら健吾が……」
「大丈夫! 立夏の方が大事だから」
健吾はそういってニコッと笑った。
「じゃ、立夏いくよ」
私達は駅から家まで20分かかる道を走った。
「立夏……濡れなかった?」「うん、いく!でも……健吾の服が……。健吾も濡れちゃったし……」「大丈夫だって! 俺、滅多に風邪引かないし。じゃあ、おやすみ」
そういって健吾は私にキスをして部屋に入っていった。
月曜日。健吾とのお泊まり3日目。
「健吾、まだ起きてこないなー……」
すると5分後、健吾が部屋から出てきた。
「あっ、健吾おはよー! ……って、健吾!?」
健吾は咳をして鼻水を垂らして顔を赤くしながらこっちにきた。
「……立夏ー……風邪引いたよ……ズズッ……へっくし!!」
健吾はは足をもつれさせながらリビングのソファーに座った。
「……じゃあ体温計で熱測っておいて、私は学校に欠席するって伝えとくから」
「うん……わかっ……へっくし! わかったよ……ズズッ」
私は2階にある電話機で高校に電話をした。電話をしたあと、体温計が鳴るのを待った。
――ピピピピッ、ピピピピッ
3分後、体温計が鳴った。
38.5℃……
「立夏ー、頭がズキズキするー……」
健吾は起きた時よりも顔色が悪くなっていた。
「……ちょっと待ってて!!」
私は冷蔵庫から冷えピタをだして、健吾のサラサラしてる前髪を手であげて貼った。
「……ひゃっ!! 冷たっ……」
いや、冷えてなかったら意味ないし。私は健吾の隣に座った。
「健吾、食欲ある? 吐き気は?」
「吐き気はないけど食欲はあまり……」
「そっか……じゃあお粥は食べられる?」
「うん、それなら大丈夫かも……」
「じゃあ今から作るね! その間、健吾は部屋で寝てて? 歩ける?」
「うん、大丈夫……」
「あっ、出来上がったら部屋にいくからね!」
フラフラと階段を上がっていく健吾にそういって、キッチンにいってお粥を作り始めた。
……よし、お粥完成!
お粥をおぼんに乗せて私は健吾の部屋にいった。
「健吾ー、お粥できたよー」
「んー……」
健吾はベッドからムクッと起きた。
「はい健吾、あーん♪」
私はお粥をスプーンで健吾の口に近づけた。
「……っ!! だっ、大丈夫だよ、自分で食べられるって……」
「いいの! はい、あーん♪」
「……あ……あーんっ…………」
健吾は少し恥ずかしながら口を開けた。
「どお? 美味しい?」
「……うん、美味しい」
「よかった〜♪ じゃあもう一口♪」
「……いい、自分でやる」
「えーっ……」
私は頬をぷっくりと膨らませた。
「……嘘だよ、早くちょうだい」
健吾はクスッと笑ってそういった。
「……健吾の嘘つきっ、……あーん♪」
私は健吾の口の中にお粥を入れて、健吾は美味しそうに食べている。数分後、健吾はお粥を完食した。
私も昼食を食べ終わり、自分の部屋で日記をつけたり勉強していた。健吾はたぶん、ベッドで寝ているだろう。