「――なんて事をいうの!! あなたは皆から愛されてるのよ!? 愛されてない……愛されない人なんてどこにもいないのよ!!!」
……お母さんは泣いていた。
そうだよね、愛されない人なんていない。健吾やお母さん達に私は愛されてるんだ……
――――生きたい――。
……生きて……生きてやり直そう……花恵ちゃんと話し合おう……。
そして、そのあと医者に診断してもらった結果、記憶が戻ったらしい。
病院を出ると花恵ちゃんがいた。
「……花恵ちゃん? もう6時だよ? 早く帰らなきゃ――」
「…………めん……」
「……え?」
「ごめんなさい……っ! 私がっ……私が『あんたなんか死んじゃえばいいのに』なんて言ったから……!! ……まさか……まさか本当に自殺しようとしたなんて……っ」
「そんな……、大丈夫だよ……!」
「本当に……本っ当にごめんなさいっ……!!」
花恵ちゃんは何度も何度も私に深く頭を下げて謝った。
「もう大丈夫だって……! ほら、もう家に帰ろ? 送ってくよ」
「…………う……ん」
私とお母さんと花恵ちゃんは、車に乗って家に向かった。
――数日後、私はいつも通り学校にいった。
教室のドアを開けると、クラスの皆が一斉に私の方を向いた。
『尾崎さん!! 大丈夫!?』『自殺しようとしたって本当なの!?!?』とクラスメイトが聞いてくる。
「……大丈夫だよ! もうこんなに元気になったもん!」
そう言って私は席についた。それから5分後、チャイムが鳴って駒石先生が入ってきた。
「皆さんおはようございます。……尾崎さん、大丈夫そうでよかったです。今日も1日頑張りましょう」
そして朝学活が終わった。
4時間目が終わり、廊下で舞達を待って皆で食堂にいった。
「うわ、広っ……!」
「本当だ……早く座ろーっ!」
私達は席に座って、1人ずつ食券を買いにいった。
「……でさー、有理は彼氏とか……好きな人とかいないのー?」
「んぐっ……!? っゲホゲホ……っ舞、いきなりなに!?」
有理はビックリしたのか、ご飯を喉につまらせてむせてしまった。
「だってさー、このグループで恋人いないのって有理だけじゃん? 花恵ちゃんはグループ抜けちゃったし」
「確かにな……いねぇの? 好きな人」
朝田もニヤニヤと笑いながら有理に聞いた。
「……い……いるよ、好きな人」
有理は少し恥ずかしそうに下を向いてそういった。
「だれだれ!? 同クラっ!?」
一穂がガタッと勢いよく立ち上がった。一穂は人の恋の話を聞いたり、好きな人を探るのがとても好きなのだ。
「えっ……と……先生っ……高校の……」
「……石川先生……」
「……あー! 数学の先生の!」
石川光貴(いしかわ こうき)先生。数学の先生で独身。優しく教えてくれるから男女問わず人気の先生。
「コクったり……しないの?」
「えっ……コクりたいけど……先生と生徒だよ?」
「大丈夫っ! 今日コクっちゃえ☆」
えええっ!?一穂も舞もいきなりすぎ!!
「よし! 食べ終わったら石川先生を呼び出そうぜっ!!」
朝田まで!?
「えっ、ちょ……心の準備が――」
「ほら有理、行くよ!」
気が早いよ皆……
私達は職員室にいって石川先生を呼んだ。
「はーい、何か用ですかー?」
「……あのっ……ちょっと数学の事で分からない所があるのですけど……放課後、数学室で……教えてくださいっ!」
有理ったら、顔真っ赤っ……
「あぁ、いいよ! じゃあ放課後、待ってるから」
そう言って石川先生は職員室に戻っていった。
――そして放課後、有理は学活が終わったあとに数学室に向かって走っていった。
私達は有理が戻ってくるまで下駄箱で待った。
――ガララッ……。
数学室に入ると、石川先生が椅子に座ってテストの丸付けをしていた。
「……おっ、斎条きたか。俺がなんでも教えてやるからな」
……なんでも……?それって、恋愛のこともなのかな?それとも、あんなことやこんなことも……
「……どうした、斎条。顔が真っ赤だぞ?」
「……えっ、あ……! す、すすすすすみませ……っ」
「……もしかして俺のこと、好きなの? 先生としてじゃなくて、男として……ね」
先生はあたしを壁の方にどんどん追い込み、さらに両腕を掴まれて私は動けなくなった。
「…………なあ、どうなの?」
「……す……数学早く教えてください……」
「……本当は俺と2人きりになりたいんだろ?」
「…………はい……」
すると、先生はあたしを抱きしめてきた。
「俺だって斎条と2人きりになって……話したかった……」
「先生っ……」
「ん? なんだ?」
「…………好きです。あたし、生徒ですがダメですか?」
「……俺も好きだ、付き合おう」
15分後、有理が階段を下りてこっちにきた。
「有理! どうだった!?」
「成功したわよ♪ デートも誘えたし!」
そう!もし成功したらウサギ公園でお花見すると決めていたのだ。私と健吾、一穂と朝田、有理と石川先生……あれ?
……悠太と舞……どーすんの!?
「ね、ねぇ……舞と悠太! あなた達、恋人いないじゃん!!」
「「ん? 大丈夫だよ」」
「だってあたし達、付き合ってるし」
……ぇぇええええー!?!?
「え!? えっ!? 本当!? いつから!?!?」
「中3の卒業式のあとに俺達いなかっただろ? ほら、打ち上げを学年会でやったじゃん」
……あ……。確かにいなかった!
「あの時、告白したんだ、舞が」
「へ……へぇ〜……?」
「ちなみに、一穂達は大分前から知ってたよ」
「んへ!?」
思わず『んへ!?』という変な声を出してしまった。
「ゴメン、立夏に伝えんの忘れてた……」
一穂忘れないでよぉぉぉ!!!
そして日曜日、私は待ち合わせ場所の兎野駅で待った。
「おーい立夏ーっ! 遅れてごめーんっ!!」
皆がこっちに走ってきた。
「んじゃあ、ウサギ公園にレッツゴー!!」
私達はウサギ公園に向かった。
ウサギ公園にある桜は、満開だった。野原のように広い芝生には、お花見している人達がたくさんいた。
「……よし、ここに場所とろっ!」
私達はレジャーシートを広げて場所をとった。
「あそこの木で写真とろうよ!」
私達は芝生の近くにある大きな桜の木にいった。
「あの〜、すみません、カメラ……お願いします」
悠太は、通りかかった女の人に写真を撮ってもらうように頼んだ。
「はい、チーズ!」
「……ありがとうございました〜!」
私達はお辞儀をして、さっきの場所に戻った。
「――立夏が作った卵巻き、スゴく美味しい!!」
「そう? よかったぁ〜、うまくできたか心配だったから……」
「全っ然! あっ、俺もお弁当作ってきたんだけど食べる?」
「うん、食べる!」
悠太が作ったお弁当のふたを開けると、色とりどりの食材が入っていた。
「立夏」
名前を呼ばれて振り向くと、健吾が何かを口の中に入れてきた。
――ゴクンっ……。
……美味しい……。
…………ん?なんか……体がふわふわというか……なんというか……。
「チョコ買ってきたんだ、どう? 美味しい?」
「…………健吾ぉ〜……」
私は健吾の首に腕をまわして健吾の頬擦りをした。
「!? ……立夏!? もしかして……。やっぱり。チョコに洋酒入ってた……」
あれー?なんか健吾がいつもよりかっこよく見える……
「健吾カッコいい♪」
その一言で健吾の顔は真っ赤になった。
「…………ッ!! ごめん皆、俺達先に帰る」
そう言って健吾は私の手を引っ張って私の家に連れて行った。
〜健吾side〜
俺は、立夏の家に連れていき、寝室のベッドに運んだ。
「今から水持ってくるからベッドに座って待ってろ」
そう言ってキッチンに行こうとしたら、後ろから腕を掴まれた。
「健吾ぉ……行かないでよぉ〜……」
立夏は子猫のように甘い声と潤んだ目で俺を見てきた。
やめろ……そんな目でみんなよ……
立夏………………
やべぇ、メチャクチャ襲いてえ。
「健吾ぉ……エッチしよ?」
……っっ!?!?
「ま、待て立夏……」
「だーめ、私もう我慢できない。えいっ☆」
立夏は俺をベッドに押し倒してきた。
ちょっ……!!なんか立夏、酒飲むと大胆で積極的に……って、
そんなこと考えてる場合じゃなーい!!!
立夏は俺が着ていた服を脱がし、いつの間にかパンツだけになっていた。
つか、気づかない俺って……。
「ねぇ〜ヤろうよぉ〜……」
そして俺は我慢できなくなり、立夏とヤった。
藤野みたいに強引じゃないけど。