【完】私の彼氏は転校生。


ドアを開けると、そこには険しい顔をした福岡先生と金髪の男、先輩が3人いた。


「……この子達が殴ったり蹴ったりされた子……奥野と佐川と滝本だ」


「……で、本題にはいる。まずは被害者の意見から」


男達は椅子から立ち上がった。


「……俺達は一昨々日(さきおととい)、道を歩いていたら尾崎が『ちょっとこっちにこい』っていって俺達を人通りが少ない所に連れていってそれで暴力を受けました」


「……じゃあ尾崎の意見」


「私は一昨々日、原宿に行ってました。そして帰るときにこの男達が一人の男性を脅してました。私はそれを止めにいきました。私はこの人達に暴力はしてません! この人達は嘘をついてます! もちろん写真も嘘。先生はこの人達に騙されてるんです!!」


「……さい……」


「え?」


「……うっせーんだよオマエ!!!!!」


!?!?!?


え!?先生……!?!?






先生の目は人間とは思えない、いかれた目つきだった。


「大体お前、ずっと前からムカついてたんだよ! !優等生ぶって……! だから3人からこの話を聞いた時は心の底から笑ったよ!!! アーッハッハッハッハッハ!!!!!」


先生はどこかのネジがとれて壊れてしまったロボットのように狂いだした。


私、健吾、舞、一穂、有理。そして男達も先生をみて呆然としていた。


……これは話し合ってる場合じゃないよね……


「……私、ちょっと他の先生呼んでくる……!!」


一穂は多目的室をでて1つ下の階の職員室に走っていった。






数分後、一穂が校長先生を連れてきた。


「……福岡先生!? どうしたんですか!? ……皆さんは先に帰っててください。あとは私達が解決させますので」


そういって私達は多目的室から出ていった。


多目的室のドアの向こうからは、騒ぎ声のような声がした。



――翌日、学校に行くと、福岡先生は教卓の前にはいなくて、代わりに副担任の秋野先生が立っていた。


「はい、皆さんおはようございます! 突然ですが福岡先生は先生を辞めました」


すると、教室がざわつき始めた。


「……それで、今日から新しく入った先生がこのクラスの担任になります。……どうぞ、入って下さい」

教室に入ってきたのは、意外なあの人だった。






「どーも初めまして! 今日からこのクラスの担任になる藤野 葵です! よろしくお願いしまっす☆」


軽っ。


……ていうか


この人、この前脅されてた人じゃん!!!!


私が藤野先生の方を見てると藤野先生は私の方をみて、にっこりと笑った。


この笑顔……悠太に似てる……


すると、藤野先生は私をみて


「あれ? そこのキミ、どうしたの、僕の事じーっとみて。……もしかして、惚れちゃった?」


!?!?


「……はいぃ!?!?」


「照れなくてもいいんだよ、お嬢さん♪」


「……っ!? 〜〜照れてないですー!!!」


この先生との言い合いは、15分続いた。


この人……











キャラ凄い。






そして私は帰るときに音楽室の前を通りかかった。すると、音楽室からピアノの音が微かに聞こえた。


誰だろう……?音楽の先生はとっくに帰ってるし……


私はそーっと音楽室のドアを開けた。


……


なんと、ピアノを弾いていたのは、今日新しく担任になった藤野先生だった。






先生の顔は、さっきの……朝学活の時とは違って、真剣な顔をしていた。


きれい……。


先生の表情も、ピアノの音色も。


――すると、先生は気配を感じたのか、弾くのを止めて私の方に振り向いた。


「――……聞いてたの?」


「はい、途中から」


「えーっと……キミ、名前は?」


「立夏です、……尾崎立夏」


先生は私の名前を聞いた瞬間、目を見開いた。






「……立夏ちゃんて、悠太と付き合ってる子でしょ?」


「今はもうただのクラスメイトですよ。別れたんで」


「……へぇ……どうして?」


「……私の男友達が聞いちゃったらしいんです。『いい体してるから』って言ってたらしいです……」


「へぇ……あいつも男だな……。今は誰かと付き合ってんの?」


「はい、そうです……ていうか、なんでそんなこと聞くんですか!? あなたは悠太のなんなんですか!?」


「僕? 僕は悠太の兄だよ」


やっぱりか〜……少し感づいてたけど。


「あ、僕がここでピアノを弾いてたこと、誰にもいうなよ? もし言ったら……」


「言ったら?」


先生は私の方にどんどん近づいてくる。私は壁に背中を ドンッ……とぶつけた。……というか、追い詰められた?


すると、先生は壁を手で ――ドンッ―と叩いた。


……壁ドン?






先生は私を見つめてきた。


――吸い込まれそうな瞳……


「僕と付き合えよ? ……ていうか立夏ちゃん隙ありすぎ」


そういって先生は音楽室から出ていった。



え……?


え……!?


えぇ!?!?


『僕と付き合えよ?』って!?


教師と生徒だよ!?!?


そっちの方が秘密にする方だよね!?


ていうか、健吾と付き合ってるし!!


……とにかく、帰ろう。


私は再び鞄を持って校門に向かった。






――翌朝、私は健吾と一緒に登校した。


「……なぁ立夏、あの藤野先生って何者なんだろな……」


「……あの人、悠太のお兄さんらしいよ!」

「えっ、そうなの!? っていうか、なんでそんなこと知ってんの? 昨日藤野先生と何かあったの?」


私は昨日の放課後のことを思いだし、顔が赤くなった。


『僕と付き合えよ?』って……。言われたけど健吾には言わなかった。


「……立夏?」


健吾に声をかけられて我に返る。


「……あっ、ごめんっ! 何もなかったし、されてもないよ!」


「そっか。何かあったらすぐに言えよ?」


「……うん!」


私達は手を繋ぎながら学校に行った。