「…奈、理奈、理奈!」

私の名前を必死に叫ぶ、都樹の声が聞こえた。

あれ、私、飛び降りたんじゃなかったの…?

体の感覚が徐々に戻ってくる。指は動いた。腕も、首も少し動かせた。ということは…。

「理奈!」

私がゆっくりと、かつ恐る恐る目を開くと、そこには目を腫らせた都樹の姿があった。ベッドに寝かされていた私は、都樹の手で揺さぶられていた。

「都樹…?」
「馬鹿…本当に飛び降りんなよっ…!」

都樹は布団を掴むと、そのまま涙をこぼした。

…結局、何もできなかった。むしろ、さらに罪を上乗せしてしまったような気さえする。

「…ゴメン。」

私は視線をそらし、窓の外をボーっと眺めながら言った。

「今日は…帰っててくれない? 一人になりたいから…。」
「一人になったら、また変なことやり出すだろ? 帰る気はないから。」
「…お願い。」
「無理。」
「一人にさせてよ!」

病院だというのに、大声を出してしまった。

「…分かった。」

都樹が病室から出る姿を、私は見なかった。やっぱり、出ていく姿を見ると寂しくなってしまうから…なのかもしれない。

次の日から、私は面会謝絶をした。メールにも返信せず、電話にも出ないまま、私は退院した…。