私は、ふらふらと病院に戻って行った。だが、都樹に会おうとしていたわけじゃなかった。

私は階段をひたすら登った。

ドアがある。開けた。ドラマなどでよく見る、ビルの屋上。

そよぐ風が、少し冷たい。でも、気にする必要はない。

私は柵のない場所を見つけると、その方へとまっすぐ向かった。

靴を脱ぐ。

端に立つ。

こうしてみると、やっぱり少し怖かった。でも、自分の意志でやれるだけまだマシだ。そう思っていた。

癒紀は…別にこうしようと思ったんじゃない、と思うから。

だから…。

私はその場で、ゆっくりと体を前に傾けた。道路や、そこを走る車あるいは人の群れがやけに小さく見える。

「…癒紀、すぐに行くから…。」

私は呟き、地面へと落ち…。

あれ?

何かが私の腕を上へと引っ張っている。

「死ぬなんて、誰が許した?」
「あ…。」

私の腕を引っ張っていたのは…都樹だった。都樹は両手で、私の片腕を必死で上へと引っ張っていた。