「…えっ…?」

夢であってほしかった。

せっかくできた友達の癒紀が…死ぬ…?

信じられない、を通り越すと、人はもはや何も考えられなくなるらしい。

「へへっ…びっくりだよね…。私、死ぬなんてさ…。何か、実感湧かない。」

無理して笑っているのが分からない方が異常だった。

「…。」

私は黙って立っているしかなかった。

「そうだ、最後に言っておこうと思っ…うっ…!」

癒紀の容態が急変した。癒紀はベッドの上で、もだえ苦しみ始めた。癒紀に繋がれている心電計も、乱れた癒紀の脈を映していた。

「癒紀!?」
「うっ…あぁっ…!」
「久尾!」

私達は祈った。

だが、その祈り空しく、癒紀は、生涯を終えたのだった。

実感がわかないからだろうか。涙は流れなかった。代わりに、私の心に、何かが影を落とした。

その影の正体は、すぐに分かった。罪悪感だ。

私は、ずるい、そして冷酷な人間だ。そう思わずにはいられなかった。

私は…この出来事を、少しだけラッキーと思ってしまったのだから。