「……ごめんね」

静まり返った部屋の沈黙を破ったにぃ。

俯いていて、その表情は伺えない。

「なんで?」

「黙って…いなくなったから。初めからいっていればよかった」

「いえなくしたのは俺の責任。だから、にぃは気にしなくていいんだよ」

「……私ね、この子は2人で育てなくていいと思ってる」

「え?」

何を思ってその言葉を紡いでいるのかわからない。

「1人でも育てられるよ。だから、カナちゃんは他の人と……」

「……んだよ、それ」

「え?」

震える拳を強く握り締め、俺は声を荒らげる。

「何だよ、1人でも育てられるって?一言でも育てないっていったか?」

「そうじゃないけど……」

「なに?浮気しないかが心配なわけ?」

「違う!!!」

「じゃあ何だよ!!??」

言葉に詰まり、また俯くにぃ。

俺はゆっくりにぃに近づき、抱き寄せた。

「他の人、なんていらないよ。にぃと離れた間、ずっとにぃのことばっかり考えてた」

そう、全てはにぃともう一度。

だからずっと頑張ってこれた。


「このままじゃダメだ、変わらなきゃ。って1人前になれるように頑張った。……にぃを迎えに行きたかったんだ」

「へ……?」

体を離し、にぃと顔を合わせ微笑む。

「ずっと、にぃに会いたかった。にぃとまた笑い合うために仕事も頑張った。こんなにも人を愛したのは初めてだよ」

にぃの瞳に涙が溜まる。

あぁ、変わらないね。

愛しい気持ちが溢れそうだ。

「だからね、にぃ」




「ーーーーー俺と結婚して下さい」