「あの日もしかして……」

「そう。それで、その後に妊娠がわかって……。迷惑になるといけないから…貴方の前から姿を消したの」

「何で……!!いってくれれば…!!」

「いえないよ……」

「え?」

「いえるわけ…ないじゃない…。もしも拒絶されて堕ろせって言われたら?また浮気されたら?そう思ったら、どんどんいえなくなってた」

俺は何も言えなかった。

すぐに信じることなんてできないのに。

不安定な時期に…俺はあんな最低なことを…。

毎日寂しい思いさせて、泣かせてきたのに。

どんだけひとりで悩ませた?

どんだけひとりで泣いてた?

こんなにも愛しい人に辛い決断をさせたのは他でもない……


俺だ。


「考えたらキリなくて……!!だから、だからっ……!!」

俺は優しくにぃを抱き締めた。

壊れ物を扱うように、優しく、優しく。

「ごめんな、今まで……。俺にぃの気持ち、これっぽっちもわかってなかった」

「……ふっ、うぅ……あぁぁあ……っ!!」

俺にしがみついて子供のように泣くにぃ。

謝っても謝りきれないね。

こんな最低な男でも、君は変わらず愛してくれてた。

ごめんね、ありがとう。

「ったく、お前らはほんとに。お互い思いあってるクセに意地はりやがって」

「そういえば、なんで月希は知ってたんだ?」

「ショッピングモールに行った時にたまたま会ってな。それで話してたんだよ。この1ヶ月俺が気づかせようとしてたのに、鈍感な誰かさんは気づかないもんな?」

「うっ…わ、わかりにくいんだよ!」

「ちっ……めんどくせぇヤツら」

そういって鞄を持って玄関に向かう月希。

「帰るんですか?」

「あとはお2人さんで話し合え。俺の役目は終わり。お幸せにな」

薄く笑みを浮かべ、ヒラヒラと手を振って帰っていった。