「え、でも月希さんっ!!」
「狩那緋、早く入れ」
俺は少し考えて、渋々中へ入った。
にぃはリビングに駆け足で戻り、部屋へ入ってしまった。
それほどまでに嫌われたのか。
馬鹿みたいに迎えにいくとかぬかしてた自分がアホらしくなった。
今まではなんだったんだろう。
「とりあえず座れよ。虹恋ちゃん、君たちも早くおいで」
“君たち”?
ここは月希とにぃの2人のはずじゃ?
そう思っていた時だった。
にぃが生まれたての小さな赤ちゃんを抱いて部屋から出てきた。
「赤…ちゃん……?」
ゆっくり、ゆっくり近づいてくる。
にぃは今にも泣き出しそうな顔だ。
「にぃ…どういうことなの……?」
「そ、れは……」
しばらくの沈黙。
それを破ったのは月希だった。
「遅せぇよ、狩那緋。危うく自分から言おうと考えてたところだった」
遅い?自分から言う?何を?
俺の頭ははてなで埋め尽くされた。
「虹恋ちゃん、座って。説明してあげな?」
そういわれて俯く。
口をつぐんで何も話そうとしない。
説明って何を?
月希との子供です、って?
「どういうことなの?」
ずっと俯いて黙っていたにぃがゆっくり顔を上げ、俺の目を見つめいった。
「…この子、は……との子供な、の」
「え?ごめん、聞こえなかった、もう一回…」
「だから!!」
少し声を張り上げ、顔を歪ませていう。
「……カナちゃんとの、子なの」
「…………え?」
俺は一瞬にして頭が真っ白になった。
俺との子供?
でも何で?
あの頃、そういう行為はしてないはず。
だから俺は浮気したし、女を抱いた。
にぃにはぶつけられない性欲を他の女で満たしてた。
一体いつから?
「ちゃんと、説明するね。カナちゃんは覚えてないだろうけど…1度だけシたの。あの日カナちゃん…すごい酔ってたから……」
「酔ってた…?もしかして!!」
1度だけ記憶をなくすくらい呑んで帰ったことがある。
ドアを開けて家に入ったまでは覚えているけど、その後の記憶がなくて。
お風呂に入って酔いが覚めて、酷いことをしてないかって心配になって寝室へ行って。
でも何事もない顔で笑うにぃを見て、何もしてないと安心した。