“何で?”

それだけが頭を巡っていた。

月希は1番近くで俺を応援してくれてた。

俺もできる限りのことはする。

なにか情報が入ればすぐに教える。

そう言ってたあの言葉は嘘だったのかよ…?

怒りよりも悲しみが勝った。

「…行こう」

ちゃんとこの目で確かめる。

俺はあの頃の俺じゃない。

約束しただろ、幸せを願うって。

あの日誓っただろ。

もしもにぃに大切な人が現れたら…身を引くと。

親友に幸せにしてもらえるなら安心だろ。

俺は震える手足を無視してアパートへと向かう。

一歩一歩進み、ついにドアの前へ。

大きく深呼吸をしてインターホンを押す。

しばらく待つと、ドアが開き月希が出てきた。

自然な動きで。

まるでそれが当たり前かのように。

「…狩那緋」

「にぃ…だったんだな、相手は」

黙る月希。

図星…かぁ。

そう思っていると、リビングからにぃが出てきた。

「お客さん誰でし……え…?カナ、ちゃ…ん」

「……久しぶり、にぃ」

薄い頬笑みを浮かべ、愛しい人に声をかける。

やっと会えたのに、どうしてこんなに辛いんだろう。

胸が張り裂けそうだよ。

「中、入れよ狩那緋」