「いや、頼んでもないんだが…」
「とりあえず!猛ダッシュでここに来たの!喉が渇いたわ!」
うーーわ、ワガママ。
ほら、ほらほら、狩那緋の顔が引きつってるぞ。
素を出すまで…3、2、1。
「お前ワガママも程々にしろよ」
「なによ、怒ってるの?」
「あんま月希を困らせるなっつってんの。これから仕事があんだよ、支障でたら責任取れんの?今日が期日の案件もあんだけど」
「そんなのあんたがやればいいじゃない!」
「そんなんだから相手にもされねーんだよ。ちょっとは成長しろよな。中身幼稚園生かよ」
うっわー、キツイこというねー。
俺の親友こっわ。
んまぁ、成長しようとしてるやつからすると腹立たしいわな。
「な、な、何よ何よっ!!子供で十分だわ!!それでも月希様を振り向かせて」
「甘すぎ、バカじゃねぇの?出直せ」
あー、ほら、いい過ぎだって。
フィールが泣きそうだって。
「狩那緋、やりすぎだ」
「…喉乾いたんでしょ?飲み物買ってくるよ。月希も行く?」
「あぁ。少し待っててくれ、フィール」
下に降りて車に乗り込む。
そして一言。
「ナイスタイミングだ、狩那緋」
「自分でこうなるように仕向けたくせに。抜けるきっかけが欲しくて俺を使うなんてね」
「そうでもしなきゃ逃げれないだろ。早く車出せ」
「はいはい、社長様の仰せのままに〜」
察しがいいな、コイツは。
俺がフィールと離れたいのをわかってたらしい。
だからあえてキレてみせた。
さすが俺が見込んだ男。
浮気性だけは理解出来ないがな。
「で、どこに向かえばいいわけ?」
「そのまま車を走らせておけ。気になったところで止める」
「はいはい」