「あー」

大きく口を開ける。

冷ましたお粥を口に入れる。

「ん、おいしい!」

ふわっと柔らかく笑う。

「……なんで風邪ひいたの?」

「わかんない。なんでだろ?」

「ご飯は?ちゃんと食べてる?」

「カップラーメン」

「え!?なんで食べないの!?」

「最初の頃は食べてたよ。けど、どんな料理を食べても味がしないんだ。にぃの作ったご飯を思い出す」

「………バカじゃないの」

「いいよ、それでも。またにぃに会えた」

無邪気に笑うカナちゃん。

「熱が下がったら帰ってよ。色々忙しいし」

「うん、わかった。ねぇ、にぃ?」

「なに?」

「俺を愛してくれて、ありがとう」

「!!」

そんなこと、いわないで。

私の決意が揺らいでしまう。

「にぃを幸せにできなくて…ごめん」

そんな顔して笑わないで。

胸が苦しくなる。

「少し休むね。おやすみ、にぃ」

どうしてこんなに苦しいんだろ。

忘れなきゃいけないことはわかってる。

けど、忘れられない自分がいる。

苦しいよ。

こんなにも胸が苦しくなるんだね。

愛おしいのに。

離れがたいのに。

私が……離れなきゃ。

もう迷惑はかけられないでしょう?

そう自分にいいきかせて。