「仲直りするまで帰ってくんな」

樹は私と鈴木くんを家から追い出すと、鍵を掛けて完全に締め出してしまった。

こうなると寒空の下、トボトボと歩くしかない。

鈴木くんは黙って私の手を握った。おあつらえ向きに温かい。

片手をポケットに突っ込んだまま歩いて行く後ろ姿を追いかけた。

避けていたのは私なのに、この温もりがずっと愛おしかった。

「何かあるなら言って」

きっかけをくれたのは鈴木くんだった。いつもそうだ。彼は私の望む物をくれる。

「黙っていても何もわからないよ」

顔は見えなくても、怒っているのは感じ取れた。

バカだ。本当にバカだ。自分が情けない。

……私の心無い行動はあの温厚な鈴木くんを怒らせた。

今度こそ、本当に嫌われたかもしれない。