(聞けるはずない……)

“先週の金曜日、関谷さんと一緒だったの?”

もしYESと答えられて関谷さんとのただならぬ関係が明るみになったらと思うと怖かった。

NOと答えられても余計に落ち込む。

一緒だったことを隠すなんて、やましいことがありますって言っているようなものだ。

「佐藤さん?」

鈴木くんが訝しげに顔を覗き込んでくる。

……もう、だめだ。耐えられそうにない。

「支度するから座って待っていてくれる?」

今は傍にいること自体、不愉快な気持ちになる。

ここは私の唯一のテリトリー。だから、邪魔をしないで欲しい。

大人しく台所から出て行く鈴木くんを見送りながら、タオルで手を拭く。

(……どうかしているわ)

これが世に言う“重い女なのか。

シンクに映った自分の顔は惨めなほど弱々しく見えた。