(関谷さんと……?)

バッグを握る手に力が籠った。

先週の金曜日といえば鈴木くんと夜の月見に出掛けた日だ。

彼女の言うことが事実ならば、鈴木くんは関谷さんと会ったその足で私の元にやって来たということか。

(あ……なんか……嫌な感じ……)

ドロっと黒い物が胸を渦巻くのが分かった。それはみるみるうちに広がって、心を浸食していく。

「通してもらえる?」

……まるで、自分の声じゃないみたい。

私は道を譲る彼女達を一瞥するとロッカールームの扉をバンッと勢いよく閉めて、廊下に飛び出した。

スタスタと歩いてエレベーターに乗り込むと、1階のボタンを押す。

扉の閉まる速度が遅いことに、妙にイライラしてきて何度もボタンを叩いた。

ようやく動き出した密室の中で、ぎゅっと唇を噛みしめる。

考えたくないのにぐるぐると同じ質問が頭を回っていった。