「あらあら。私に隠し事するなんて10年早いわよ?密室でふたりきりなんて、一体何してたんだか?」

「な!!何もしてないわよっ!!」

私は顔を真っ赤ながら懸命に己の無実を主張したが、相手はあの椿である。

わかったわかったと勝手に納得したように頷くと、ふうっと悩ましげにため息をつく。

「いいなあ、私も早く彼氏作ろうっと!!どっかに良い男が転がってないかなあ……」

「……椿には佐伯くんがいるじゃない」

なんとはなしに言うと、椿はかなり渋い顔をして出来上がったばかりの資料をバンッとやや乱暴に机に置いた。

「やめてよ!!あんな男、好みじゃないから!!」

椿はぷりぷりと怒って頑なに否定したが、傍から見ればお似合いのふたりに違いない。

(いい加減、認めればいいのに……)

……惹かれているなんて認めない。

……嫌っていると思い込んでいたい。

いくつになっても乙女心は複雑怪奇な代物である。

私はいつまでも憎まれ口を叩いている椿を眺めながら、しみじみと思ったのだった。