「前にこの症状が出たのは就活中だったかな?多分、働くか家事に専念するか悩んでいたんだわ。その前は大学受験。推薦をもらって家から近い短大にするか、頑張って四大を受験をするか決めかねていたみたいよ」

早苗ちゃんはそう話を締めくくるとメニューをパタンと閉じた。

「店員さん、すいませーん!!アップルパイ追加で!!」

甘いものは別腹だと言うが、恐るべし女子高生の胃袋である。

「まあ、どっちも私達に相談できる問題じゃないからね。ひとりで悶々としている姉さんは不憫に思えたわ」

「早苗ちゃん……」

「姉さん、ひとりで抱え込む性格だからあんたにしっかりしてもらわないと私達だって困るのよ。わかったらさっさと何とかしてよね。彼氏でしょう?」

早苗ちゃんの言い方はどことなくツンツンしていたけれど、俺のことを佐藤さんを支えることのできるひとりの男として認めてくれているように聞こえた。

「ありがとう!!早苗ちゃん!!」

感激のあまりテーブルから身を乗り出して、早苗ちゃんをむぎゅっと抱きしめる。

「ぎゃーーーーっ!!離してよ!!この変態っ!!」

俺は元気づけてくれた早苗ちゃんに感謝しながら、参考書の連打を甘んじて受けたのだった。