「亜由ちゃん、気を付けてね!!いざとなったら例の彼氏に守ってもらいなさい!!」
「え、いや……あの……」
鬼気迫る表情の田中さんと、眼鏡姿の鈴木くんの顔が交互にチラついて、恥ずかしさのあまり穴があったら入りたい気分に駆られる。
私が夜更けに家の前で何をしていたのか。
噂の出所を調べる過程でこの名探偵はその辺までしっかり聞き取り調査を行っていたのだろう。
田中さんはぐふふとからかうように、しみじみと言ってみせた。
「若気の至りっていいわねえ……。私にもそんな頃があったわあー」
若かりし日の思い出に浸っている田中さんの目はキラキラと輝いている。
ああ、もうっ!!
「田中さんっ……!!」
勘弁して下さいと声を荒らげようとすると、田中さんはあっさりと手を離した。
「じゃ、帰るねー。また困ったことがあったら相談してちょうだい。私は亜由ちゃんに彼氏が出来たことは大歓迎だからね!!」
アハハと笑い飛ばし呆然としている私にウインクを送ると田中さんはお隣に戻って行った。
(大歓迎か……)
少なくとも田中さんは私の味方なのだと思うと、張り詰めていた心が少しだけ撓んだような気がした。