春というにはまだ早い季節




冷たい風が吹く中




彼女を急かすように遠くの方から1時間に一本やしかこない電車の音が聞こえてくる





「はぁっ…はぁっ…まって…」






耳を真っ赤にして小さな悴んだ手を力一杯握りしめながら下り坂を走る





カーンカーンカーン………






「お願いっ!!間に合って!!」







願いとは裏腹に電車はどんどんホームへ近づき
この想いを置いてこの町を去っていった








「…うっ……ひっ…く……」






踏切の前でしゃがみこんで泣くことしかできなかった