「そこの音外さないように注意して」
片倉くんはそう言って私にピアノを教えてくれる。
「うん。」
あれから私はピアノの稽古の日以外は毎日片倉くんのところに行っていた。
ピアノの先生のように教えるのが上手いので私は夢中になって彼に教えてもらう。
私は片倉くんが好きだ。
正確に言うと片倉くんのピアノの音が好きだ。
別に彼に恋愛感情が芽生えたわけではない。
歳は私よりも片倉くんが二個上だったがそんなことをしったのは随分あとなので、私はずっとため口で話している。
本当に歳が近くても片倉くんの事も好きなのではない。
ただ、純粋に彼の奏でる音が好きなのだ。