涙を流す私を見かねて少年は私を家に入れてくれた。
そして、落ち着くよと言って紅茶を入れてくれた。
その優しさが嬉しくて私はまた泣いた。
私を慰めてくれた少年はいつも私を睨む時とは違って優しく感じられた。

「ありがとう……」
「どう?落ち着いた?」
少年はそう言って紅茶を飲む。
「うん……。」
「そっか……んで、どうしていつも俺の家の前でピアノの音を聞くわけ?」
急に本題に入り、私は身を硬直させる。
「それは……」
少年はじっと私を見ている。
私はどうしていいか分からず、下を向く。
だから、少年が今どんな表情をしているのか分からなかった。
「とても…素敵だったから、その…ピアノの音」
「えっ……」
少年は明らかに驚いた顔をしている。
それだけは何となくわかる。
「そっか、そんかことか」
少年は私から目を背ける。
私は少年見る。
「俺はさ、もっと……ストーカとかそんな感じかと思ったよ。」
少年はそう言って私の方は見ずに笑っていた。