「りおん、展開が急で説明不足だった事は認めよう――」
「しかしな、あの件でお咎めなしとはいえ、やはり何らかの詰め腹を切らされるのは、やむを得ない――それが大人の事情であり、真理なのだ――」
「で、りおん、そろそろ放してくれないかな――」
「気持ち悪い――」
りおんのご機嫌を損ねない様、慎重にタイミングを見計らい、ステッキさんは渾身の一言を紡いだ――。
「お父さんには一体、何て説明したの――」
ようやく「殺意」を解除し、まだ納得していないという意思を、ステッキさんから距離を取り、背を向け、マットレスの端に腰掛けて軽く両足をぶらつかせ、大開口部から射し込む月の囁きを読み取りながら、りおんは訊ねた――。
「それはだな――」
「いいよステッキさんっ――」
訊ねた傍から、答えを拒否するりおん――。
父とステッキさんは、自分が生まれる前から、互いに知った仲ではないのか――。
母の「濁し方」といい、今回のあまりに唐突な転校と転居――。
強い懐疑の念も示さず、妙に物わかりのいい振る舞い――。
憶測は確信へと変容する――。