「すみません――」


すれ違い様に鏡花が少し色気を含ませて言い、戸を閉め教卓の前に立ち、初老教師の気配が消えるまで沈黙する――。


少女達の躰から熱が沸いている――りおんにはそう感じられた――。


彼女らの感覚は研ぎ澄まされ、鏡花が何を言うかもうわかっている――。





「ダークエネルギーの接近が観測されました――」


魔法少女としての「本能」が沸騰する――。


「魔法監理局の要請に基づき、出撃メンバーを発表します――」


りおんの「やさぐれ出陣」以来のダークエネルギー襲来――「時給」や「名誉」に飢えていた少女達の思いは、身を焦がす熱となって先走る――。


誰が選ばれるのか――。


獲物を狩る鋭く変貌した瞳達は、鏡花を見つめる――。


穏和なひばりは、その「濃度」が薄まり、ましてりおんなど、積極的に「獲物」を狩るという「野生」が芽生えている筈もない――。


知ってか知らずか、鏡花の言葉は尖る――。



「今回は、欧州カルテットの皆さんに出撃してもらいます――」


『ああーっ――』


「ちっ――」


「ほっ――」


クラスメイト達が切なく声を漂わせ、キャサリンが悔しがり、ひばりは「安堵」する――。