「何も言われないね、ステッキさん――」
「そうだな――りおん」
あれからもう一週間が経つも、無言を貫く監理局――。
いつもの様に登校し、いつもの様に席に着き、無意識に放出される吐息――。
クラスメイトとの挨拶、たわいのない会話――。
「りおん、お店の新商品の試作、食べてみて――」
「よっ、クラッシャーりおん――細かい事は気にすんなって――」
「ま、まぁ、わたくし達にも責任はありますから、監理局が何か不当な事を言ったら一応は助けて差し上げますわ――」
ひばりが気遣い、キャサリンはあの件を豪快に吹き飛ばし、リンスロットは優しさを隠す様に自身の品位を見せつける――。
そんな、インターナショナルクラスが燻らす仄かな優しさが、りおんの心を癒す――。
5時限目――。
「先生、よろしいですか――」
ノックし引き戸を少し開け、鏡花が巡航速度に乗っていた初老教師の授業を強制停止させた――。
曇りのない笑顔を覗かせて――。
「はぁ、わかりました――」
笑顔に抵抗しない初老教師は、落胆の声を落としながら教科書を閉じ、「今日はここまで」と諦め、言い、教室を出てゆく――。