「お、おい、こまっしゃくれ――生きてるか――」


「あ、当たり前ですわ――それより何ですの、コスチュームが破れて破廉恥極まりないですわよ――」


「人の事言えるかよ――そっちこそ、お上品なお衣装がボロボロじゃないか――」


高軌道の果てまで吹き飛ばされたリンスロットとキャサリンが互いを「気遣う」――。


「鏡花の授業、もう始まったな――」


「心配いりませんわ――アンテロッティが巧く誤魔化してくれてますわ――」


「そうか――」


「ただし、鏡花は鋭いですからここでのんびりあなたと雑談している暇はありませんわよ――」


「んじゃ、さっさと戻ろうか――ハンセンッ――」


「シルフィ――」


エマージェンシー帰還モードの発動を二人はポーターに告げると、ハンセンとシルフィの「全身」は黄色く点滅し始め、ゆっくりと二人を地球へと導く――。


「ふっ、主人公補正とは――笑わせるぜ――」


「そんな事はそれこそ、適当に彼が言っているだけでしょう――」


この状況をも楽しむハンセンに生真面目なシルフィは、苛立ちを滲ませて言った――。


「これをも想定していたとすれば、ひばり嬢ちゃんと月下美人も相当なタマだな――」


「くっ――」


シルフィが感情を吐き、悔やむ――。


同時に点滅は早まり、速度が増す――。




「しかし、ケチャップとマヨネーズって――どうよ――」


キャサリンが、リンスロットに同意を求める――。


「ないですわね――」


「だなっ――」


りおんの違和感の覚える味覚に一瞬、二人の胸中に酸味が蠢いた――。


この瞬間、初めてリンスロットとキャサリンの想いは一致し、ふれ合った――。