チャイムが鳴ると同時に、鏡花が教室に入る――。


起立、礼、着席の動作を「涼しく」行う少女達――。


「リンスロットさんとキャサリンさんは、どうしたの――」


鏡花が核心を突く――教室に入った瞬間から、「演技」を察知し、いつもとは真逆の低く冷たい声で言った――。




「鏡花先生――キャサリンさんは風邪気味で、リンスロットさんは、その――急に始まってしまって、二人は保健室に――」


「そう――わかりました――」


アンテロッティが用意した渾身の台詞を、「わかっているんですけどね」という気持ちを声色と目にまぶし、答える鏡花――。


ここで弱気になり、真実を顕わにされたくないアンテロッティは、鏡花の圧力に耐えた――。


女と女の駆け引き――。


瞳の表情を緩ませた鏡花は、アンテロッティから視線を外し、ひばりへと向ける――。


少女達は悟った――。


リンスロットとキャサリンが何をして、ひばりがどう関係していたかを鏡花は全て知っている――。


反射的に少女達の背筋は震え、凍る――。


人生の厚みが違う――。


鏡花の「問い」にも、ひばりのその凛とした瞳の表情は破綻を見せない――。




「では、授業を始めます――」


私は何もかも承知してますよ――「目的」を達した鏡花はあっさりと言い、黒板に強く文字を書き込んでゆく――。